現代人の法話 
〜 青少年を育成する道 〜

 「子供は親の背を見て育つ」といわれていますが、それは当然のことで、親がぐうたらで怠けているのに、青少年の非行やいじめをたしなめたところで直るわけがありません。
 とくに最近の飽食時代にあって、親のすねをかじる彼らには人生に夢も希望もなく、お金と暇を持て余し、「小人閑居して不善をなす」(『論語』)と言われるように、好き勝手なことをして身の破滅を招きかねません。
 とくに戦後は共同生活を体験する徴兵制度が廃止され、家庭生活や地域社会が崩壊の一途を辿っている現状では、青少年にとって親兄弟はおろか周囲の子供と苦楽を分かつ機会が少なく、折からの受験地獄のような競争社会に組み込まれ、互いに優劣を競い、対立せざるをえなくなっています。こうした状況の中ではお互いが自立し、協力し合う、まともな人間が育つわけがなく、この現状をただ傍観視しているだけでは、事態はますます悪化するぱかりでしょう。
 そこで、将来、わが国を背負って立つ青少年育成のために、次のような具体的な改善策が考えられないでしょうか。すなわち、今日、独立行政法人国際協力機構(JICA)が行っている青年海外協力隊のようなボランテア活動を、政府主導の下に推進し、彼らの人生の一時期に海外での生活を体験させることです。
 JICAでは過去四十三年間に八十五か国、約三万人の青年海外協力隊員を世界各国(その三分の一はアフリカ地域)に派遣し、彼らは教育、保健、医療、経済開発、農林水産などの分野で活躍しています。(平成二十年二月現在、約二干六百名)しかしながらボランテアなので、その成果は国内であまり評価されず、帰国後の生活に不安があります。
 今後、こうした事業を通して、まともな青少年の育成と平和的な国際交流を促進するために、政府は自衛隊員や身心障害者を除くすべての青少年に、現地人との共同生活を体験させるべきではないでしょうか。そのためには、彼らに最低三年くらい海外に派遣(延長も可)することを義務づけ、旅費や生活費を負担して受入れ先にホームステイさせ、無事に帰国後は、優先的に国家公務員に採用するとか、奨学金や税制面での優遇措置を与えたら如何でしょう。
 アメリカやドイツなどではすでに「平和協力隊」、タイ国では国民皆僧制度などを設けて実行に移しています。こうしたアメとムチの方策をとることによって、脆弱で孤立し勝ちな青少年に克己心や協調性、語学力を体得させ、現地事情の把握や国際交流にどれだけ貢献するかはかり知れません。




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