現代人の法話 
〜 一日働かざれば、一日食わず 〜

 戦後、わが国は連合国の庇護や官僚主導の下、官民一体となって復興に心がけたのはよいとしても、独立するや精神的支柱を失ってまでも経済発展一本槍で猪突猛進し世界第二の経済大国になって浮かれ、バブルがはじけて再び奈落のどん底に落ち、各界での指導者階級の腐敗堕落や構造疲労が露出するようになりました。ここに来て、またぞや官僚主導の政治が社会の各層で復活しつつあります。たとえば官僚の天下りやその影響下で行われる官僚と産業界間の談合問題など、国民のうかがい知れぬ所で利権が取引きされています。こうした官僚たちは、いずれも人の褌(公金や他人の資金)で相撲をとる雇われマダム的存在で、自らの資産を投げ打ち、わが身を犠牲にしてまでも国家や組織のために奉仕する無私の精神が欠けているようです。
 かつてわが国には「素封家」と呼ばれる旦那衆がおり、進んで町のためにその資産を寄付や慈善活動などに使い、人助けをして町民の信頼と尊敬を集めていました。いわゆる欧米で言う「ノブレス・オブラージ」で、不動産や町民などから得たお金が潤沢にあったからこそ可能であったといえますが、今日では先祖や親からの遺産は不労所得として相続税や贈与税の対象となっています。また、私たちが一生懸命働いて得た所得でさえも累進課税の対象となり、公益法人に寄付したくも免税などの優遇措置がとられず、重税を課せられています。こうしたことから、国民のすべてが中産階級に成り下がり、万事、事なかれの日和見主義で、他から貰うことばかり考え、自らの責任で、自分のほんとうになすべき事を進んで実行する気骨のある人間が育たず、社会奉仕に二の足を踏むのではないでしょうか。




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