現代人の法話 
〜 エゴの限界を知れ 〜

 1970年にイタリアのオリベッティ社の副社長のアウレリオ・ペッチェイが地球の環境問題に対して政策提言をする「ローマ・クラブ」を組織し、その2年後にドネラ・メドゥズが『成長の限界』を出版して、地球資源の有限性や自然環境の悪化を警告したことは記憶に新たなことと思います。しかしながら、それから30年以上経過した今日でも、依然として抜本的な解決策が見い出せず、先頃の京都議定書も多くの国が批准しないで、経済優先の国策を進めています。このまま推移して行ったならば、この地球上での人類はお互いが生き残りのための葛藤を激化させ、早晩共倒れ乃至自滅してしまうこと必至です。最近ではモノのリサイクル、フロンガスの規制、太陽熱利用、石油や電気にとって代わる工ネルギーの研究開発などが進められていますが、人間自体の欲望を抑制しないかぎりこうした方策だけでは抜本的な解決にはならないでしょう。
 こうした事実を知ってか知らずか、最近、経済大国に住む人たちはおしなべて、今まで以上のモノや金の獲得に苦慮して不必要なストレスを溜めてノイローゼになり、期待通りの満足感が得られない時には自堕落な生活をし、中には犯罪や自殺に走る人さえ見かけます。そうでなくても、近頃の食べたい放題の飽食生活は、いつのまにか身体が肥大化して自由がきかず、病気に罹って自らの寿命を縮めているようです。体格の大小に関わらず、人間の心臓はたった一つでこぶし大しかなく、荷重を強いられていることを考えたならば、日頃から食生活においても自制すべきでしょう。仏教では古くから、人々に必要以上の欲望を抑制する「小欲知足」の生き方を勧めており、この精神を日本語では「もったいない」と言っているのです。




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