現代人の法話 
〜 夢と希望のある日本に 〜

 今日の世界は、国内外共に今まで培って来た私たちの価値観が、根底から覆されるほどの一大転換期にさしかかっています。すなわち、年金、医療、社会福祉制度など、今までは既成の国家や社会制度に依存していれば生活は安定していたものが、頼り甲斐がないと判明した結果、新しい価値観や構造、制度を模索せざるをえなくなっています。今までは国家の親方日の丸の権威の下、名誉や肩書や財産の多寡によって周囲を睥睨し従わせて、生活を満喫して来ましたが、今後、そうしたものは一切通用しない時代となったのです。
 今後の国際化社会にあって、従来の固定化した国家、社会機構の枠組みでは処理できない問題が山積し、それに対応乃至適応できない組織や個人は、遅かれ早かれ新しい時代の趨勢から取り残される運命にあります。それを知ってか知らずか、自分に火の粉がかからないのをいい幸いに、今もって古い殻に閉じこもって安泰を決め込み、時代から取り残され、世間からは嘲笑の対象になっているのを本人たちは気づかないようです。
 たとえそれに気づき、何とかならないものかと心配しても、大抵は「いずれ何とかなり、誰かがしてくれるだろう」と多寡をくくり、本人は及び腰で実際は何もせず、ただ手をこまねいているようです。そうした人に、一体、今まで何をして来られたのか、今後、何をしようとするのか、聞きたくもなります。相手を批判する前にお互いが自分の所信を語り、その得た知識や実績を公にして他と分かち合い、切磋琢磨することによって、お互いが向上し、社会自体が進歩するのではないでしょうか。こうした将来に対して何の展望(ビジョン)や方策もなく、夢と希望の持てない国家や社会に組み込まれた国民は不幸です。こうした現状では、誰もが生きる自信や誇りを持てないのは当然でしょう。
 その間隙を縫って、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国など)の発展途上国では、他の先進諸国に追いつけ追い越せと国民一体となって使命感に燃え、不自由かつ不便な生活から脱しようと日夜、粉骨砕身努力している姿が見られます。わが国は遅かれ早かれ、そうした新興国に追い抜かれるのは火を見るより明らかです。
 国民の政治不信はつのるばかりです。私たちは、投機的な儲け話と同様に、うまい話には必ずトゲが隠されていることをよく見極め、今後、政治家や他人まかせでなく、自らこの世でなすべきことに専心すべきでしょう。





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