現代人の法話 
〜 シンプル・イズ・ベスト 〜

 今日の社会風潮というべきか、近代化の落とし子として、行政から企業に至るまで、あらゆる面で機構の専門分化や複雑化が進行し、確かに快適かつ便利な生活が享受できるようになりましたが、その反面、高齢者や知的障害がある人にとっては、複雑怪奇でとてもそれに追従して行けないケースが増えているようです。
 たとえぱ電子機器や自動車などの製品の発達は日進月歩で、同業間の競争に打ち勝つために、企業は必要でもない付属品の付加価値をつけてまでも売上を伸ばそうと奔走しています。私など旧世代の人にとっては、簡単に、安全かつ確実に、使用目的が達成されれぱ十分なのに、かえって複雑な操作を強いられ、押しボタンーつ間違えば大事故につながりかねず、生活上、不便この上もありません。
 そうした機械に振り回されるだけでなく、社会生活をする上に日々の経理や、年度末には、素人には難解な税理計算による確定申告などが訪れ、煩わしいと怠れぱ待ったなしに追徴税を課せられます。とかくこの世は住みにくく、ウオルデン池の辺で自然と共に碁らした、ラルフ・エマーソンのように、喧騒の世界を離れて、心ゆたかな毎日を送りたいものです。
 たしかに私たちは、かつての不便かつ不自由な生活に後戻りすることは不可能であり、科学技術の恩恵を受けて、物質的には効率よく豊かな生活を享受できるようになりましたが、その反面、過酷な企業競争や複雑な社会機構によってかえってストレスがたまり、精神的には貧しくなったようです。こうした近代化に伴うマイナス面を超克した、新しい生活様式を構築する思想や機構を創成し、心身共にしあわせで豊かな人生を送るべきではないでしょうか。





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