現代人の法話 
〜 一切は皆、苦しみ? 〜

 

お釈迦様の初めてのお説法初転法輪≠フ中に『四聖諦』がある。これは悟りに至る「苦・集・滅・道」の四つの道筋であり、その最初、「苦諦」は、人生の実相は苦であり「一切皆苦」という真理である。

「一切皆苦?」仏教とは何とネガティブな宗教か?そう嘆く私は後にこの「苦」と訳された言葉が、原典では「自分の思うようにならない」という意味である事を知った。つまり言い換えれば「人生の一切は、自分の思うようにならない」となろう。考えてみれば確かに、様々な悩み苦しみは、自分の思うようにならない事から始まっている。夫婦関係、親子関係、人間関係、出世や名誉、お金の悩みなどなかなか自分の思い通り、理想通りにはならない。理想とのギャップがあるから悩み苦しみとなるのである。では理想とは何か?平たく言えば自分の欲である。私はこうしたいという欲があるから苦しみが生まれる。お釈迦様はこの欲を抑えれば、苦しみもおさまる事を最初のお説法で明らかにされたのである。そして「少欲知足」すなわち欲を小さくして満足を知る事を諭された。これは自分の考え方を変えなさいという事である。他人を変える、環境を変えるというのは大変であり、時には傲慢な事でもある。しかし自分を変える事は自分の力で出来る。考え方を、受けとめ方を変えるだけでも苦しみはかなりは軽減されるという事である。

峠の商人というお話がある。二人の商人が沢山の商品を背負って寒風吹きすさぶ険しい峠道を登っている。一人の商人が「寒いし、もう足が疲れてクタクタだ。こんなにキツイ仕事は早く辞めたい」とこぼす。するともう一人の商人が「私はこの峠がもっと険しいと有り難い。そうなれば峠を越えて商売をする者は私ひとりになって、もっと儲ける事が出来る」と笑い飛ばすというお話である。同じ峠道でも、考え方ひとつでこうも違う。前者は苦しみ、後者は少し欲深い気もするが、前向きな良い欲に転換し明るくポジティブだ。

目の前の悩み苦しみも、考え方を変えれば、新しい挑戦、自分を成長させる肥しだと受けとめられないか?そんな気持ちで新しい年を頑張っていきたい。




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