現代人の法話 
〜 檀家でいるのは負の遺産? 〜

 

 先日、ショックな話を聞いた。とある全国紙に名の知れた学者が「今時、お寺の檀家でいるのは負の遺産です。やれ法事だ、やれ寄付だ、とお金ばかりかかる。私の子供には檀家にならなくて良いと言ってある」という内容の文章を書いていたそうだ。これが全国的な新聞紙面に堂々と載り、かつ我が国のオピニオンリーダーが恥ずかしげもなく主張している事に愕然とした。この主旨は言い換えれば「これからの世の中はお金がすべて、先祖供養やお寺はもう価値ない」と言っているに等しい。

無論、私たちお寺のこれまでの姿勢にも反省すべき点は多々ある。しかしこんな意見がまかり通ってしまう日本の未来はどうなってしまうのであろうか。

先祖供養やお寺・仏の教えは無形の財産であり、お金では買えない価値がある。人はご先祖様のご供養を行う事によって、自分の命が脈々と受け継がれてきた事に気付き、命の尊さ・大切さ、ご先祖様や親への感謝の気持ちを知る。子供たちは、何だか分からないが法事で大人たちが真摯に手を合わせる姿を見て自然に敬虔の念を育み、礼節を知る。お寺は多くの檀家さんからの浄財で支えられ、仏の教えや人としての道を説く。いずれも人が人らしく生きるために大切なものばかりで、私たちのご先祖様が檀家制度の中でしっかり繋いできてくれた良き伝統・遺産だ。私たちが未来に残せる大切な遺産は、お金や不動産よりも、むしろ目に見えないご供養や人として生きる道の方であろう。檀家でいる金銭面だけの価値観に惑わされず良き日本の伝統・心を繋いできた本質を見つめ誇りとすべきである。

お金は大切だ。しかしお金に振り回され本当に大切なものを失ってはならない。これからは、次の世代により良い遺産として何を受け継ぐべきなのか?共に考えていけるようなお寺作りを目指していきたい。




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