現代人の法話 
〜 「マスコミの功罪?」 〜

最近のマスコミ、特にテレビの報道姿勢に疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。

具体的な事象はあげませんが、(1)事件が起これば徹底的に取材を行い放映。加害者側には徹底的な社会的制裁を加え、やもすればその家族すら厳しく糾弾。また被害者側をそっとしてあげて欲しいと思っても追い回す。(2)どの社も同じような報道姿勢。特に権力者=悪と決めつけ、なんでも批判、揚げ足取りを行い、それに対して不都合な材料には蓋をして報道すらしない。(3)視聴率最優先で何でも面白おかしくワイドショー化。コメンテーターもその社の方針、世論を忖度してるのか一方的で似たり寄ったりコメントばかり。

マスコミの役割として、重要なニュースを国民に伝え、権力を監視しその暴走を許さないという事があるのは理解している。先の大戦で政府の方針に追従し戦争推進の報道に偏ってしまった事を反省し、権力批判に力を入れることも分かるし、国民の知る権利を守り、分かりやすく伝える工夫をしているのも分かる。しかしそれでも最近の画一的で多様性の無い一方的な報道には、逆方向ながら戦前と同じ危うさすら感じてしまう。

かつてお釈迦さまは「他人の過失をみるなかれ。他人のしたこと、しなかったことをみるな。ただ、自分のしたこと、しなかったことだけをみよ。」と諭された。これはより積極的に理解すれば、単純に他人の行動に振り回されるなというものでなく、「人のふり見て我ふり直せ」で他人の行いを通じて、自分の態度、行動を謙虚に見つめ、静かに反省、修正し、さらには批判ばかりでなく建設的な考えを示すという仏教的態度の示唆と受けとめる事も出来る。

垂れ流されるニュースを鵜呑みにするだけでなく、正しい目、判断力をもって謙虚、かつ落ち着いて考え、より良い社会作りへの行動を出来る自分でありたい。



〜 「マスコミの功罪?(2)」 〜

前回に続いて、マスコミについての考えを綴っていきたいと思うが、今回はその役割について考えてみたい。

私の考えるマスコミの役割は、(1)重要なニュース、情報を国民に正確に伝える…特に災害時の正しい情報は、生命を救い被害を抑える効果もあり最重要である。(2)権力を監視し、その不正・歪み・暴走を国民に伝える…注意したいのはマスコミ自身が評価を下すのではなく、国民が権力を評価するために必要な情報を提供する立場であることを忘れないこと。右にしろ左にしろ一方に偏った意図的な報道は公共的な性格を持つ機関としてはふさわしくない。 (3)多角的な視点を提供する…世界や日本で起こっている事を様々な視点から解説また建設的な提言をし、我々の見識を高め良き方向を指し示してほしい。(4)地域の様々なニュース、話題を提供する…地域の行事・イベントや知られざる歴史や偉人、生活の知恵、話題の商品、流行など私たちの生活を精神的にも物質的にも豊かにする効果がある。

マスコミ各社も企業として業績を上げ利益を求めることは当然であるが、そればかりになるとセンセーショナルな報道で大衆を煽り立てるだけの無責任な存在に堕ちてしまう。私たちは多くの場合マスコミからの情報から様々な判断をする。それだけに正しく偏らない多角的な報道、私達の生活を豊かにする報道に期待したいし、特に(3)(4)にあげた項目は大事にして欲しい。そして私たち自身もマスコミの建設的な提言に注目し支援協力をすることでより良い日本を作っていく精進努力を志したい。




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