現代人の法話 
〜 「ご葬儀は簡単にしたい・・・???」 〜

表題は近年、お寺にてご葬儀の打合せの際に異なるお施主さんから複数回言われた言葉である。簡単≠ニは三省堂の『広辞林』によれば「手短か、簡略」という意味で、この場合明らかに相応しくない言葉であり、言った方のお気持ちを汲めば簡素≠るいは質素=u飾り気のない事、慎ましい事」が適切な言葉であろうかと想像できるところであろう。

昨今、ご葬儀をはじめ冠婚葬祭のあり方が大きく変化をしています。例えば、家族葬、一日葬、直葬等々、大切な方の最後をご身内だけで静かにお送りしたいという気持ちは理解できますし、高齢化による介護状況や経済的問題等やむなき様々な事情もあると思います。しかし一方で、従来形のご葬儀では、驚く程の大勢の弔問に訪れ、あらためて故人様が多くの方から慕われ、支え支えられていたかを目に見える形で実感でき、感謝の気持ちが心から湧きおこったという有り難い体験談も耳にする時もあり、どちらが正解という問題でもないと感じています。

あえて個人的意見を申せば、ある本に「親が子を思う心の半分も、お返しなんぞ出来るものではない」とあったように、もし親御さんをお送りされる方には自分の出来得る範囲でしっかりご葬儀を出して欲しいと考えています。

自分が子供を授かり親になった時、「子育ては簡単に…」と思った人がいるでしょうか?子供には何不自由なく充実した人生を歩んで欲しいと自分は我慢をしてでも子を優先にするのが親というものだと思います。その自分の親の最後の儀式、セレモニーであるご葬儀を簡単〜手短か、簡略≠ノ行うのは私には抵抗があります。決して派手にお金をかけてという事ではありません。環境や経済的な現実問題も考慮し簡素・質素〜飾り気なく、慎ましい≠ィ式で、ご縁のあった方々に暖かく囲まれ安らかな極楽浄土にお旅立ちいただく、皆が心から良かったと思えるご葬儀を共に創り厳かに執り行ってまいりたいと思い、願っています。



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