現代人の法話 
〜 「礼節を守れば…」 〜

 世界がコロナ禍に揺れる昨今、安倍首相が休養を取り日帰り検診を受けたニュースに接しとても落胆(らくたん)した。首相が休日を取るのは約50日ぶり、その前は約150日前とほとんど休んでいない。しかし私の知る限り、報道ではいたわりの言葉はほとんど無く健康不安や政局への邪推(じゃすい)、中には皮肉、批判まであった。もし自分が首相の立場であったら(100%有り得ないが)そのストレスだけでくじけそうだ。言論の自由とは権力者には何を言っても良いという事ではなかろう。あまりに悪意的で礼節にかけていないか。またこれらの報道を見聞きした子供達の心がどんな影響を受けるのか?つい数か月前にもネットの批判に悩み自ら命を断った女性のニュースもあり大変不安になった。
 ただ政治家、特に政権与党が厳しい視線にさらされるのはある程度仕方がない。それによって政権運営に緊張感が保たれ、不正が抑制される面もあり、また数々の失政、疑惑も確かにあり、お釈迦様も「ただ誹(そし)られるだけの人、またただ褒(ほめ)められるだけの人は、過去にもいなかったし、未来にもいないであろう、現在にもいない」と喝破(かっぱ)されているからだ。
 ただし報道には一定の礼節と多角的な視点、そして是々非々(ぜぜひひ)の姿勢、すなわち是々〜良い事や正しい事は認めて同意し、非々〜悪い事は悪いと言って反論する公平な立場で物事を論じて欲しい。でなければ早晩ただ批判しかしない無用のものと認識されるであろう。
 私たちにも礼節を守り、一部の感情を煽(あお)るだけの報道に惑(まど)わされず多角的かつ公正に物事の本質を見抜く認識力を備える努力が必要である。結びにもう一つお釈迦様の言葉を贈る。「つねに礼節を守り、年長者を敬う人には、四種の事柄が増大するーすなわち、寿命と美しさと楽しみと力(ちから)である」



Back