現代人の法話 
〜 「ご先祖さま供養の季節に」 〜

 今年もお盆そして秋のお彼岸と、ご先祖様を偲びご供養・お墓参りを行う季節が近づいてきました。それについて、今月の推薦図書にも挙げた『宗教と日本人』に興味深い考察がありましたのでご紹介いたします。NHKの『スピリチュアル・ジャパン』というドキュメンタリーは外国人からの視点で日本宗教を取材・考察する番組で、ある回で「外国人が発見するお盆」として国の重要無形民俗文化財である愛知県豊田市綾渡町の夜念仏と盆踊り≠訪れます。その中では死後の世界から帰ってくるご先祖様の象徴としてお位牌に注目、「お位牌を祀る事で、ご先祖を身近に感じられる」「亡くなった後も折々にお位牌を通じて自分の子や子孫と対話があると思えば、死への恐れに対しても心が慰められる」等の言葉を受け、お盆は生と死のサイクルを感じる機会、過去と未来と現在とのつながりの中で美しいバランスを保ち、輪廻転生や先祖崇拝という日本的な信仰に基づく実践と理解されるに至るのでした。
 しかし本書では、その考察に対して、本当にお盆行事を行う人々がご先祖様の里帰りを確信し、死への恐怖を克服しようと考えているのかに疑問を呈し調査を実施、その結果、信仰心と言うよりも地域の人々との互助・人のつながりに意義を見出し、それらが幸福感をもたらし「夜念仏と盆踊り」が長く受け継がれている大きな要因であることを明らかにします。
 私はなるほどと思い、それで良いのだとも感じる。宗教・信仰は目的では無い。語弊はあるが宗教は手段であり、いかに人生を自分らしく正しく和やかに生きるか、それが宗教の最終目的地であり、それぞれの個性・環境に合わせて、また時代に応じた変化は必要であろう。必ずしも宗教行事に確固たる信仰心は必須で無く、むしろそれらを通じて、幸福感が得られ、良きご縁が広がれば充分素晴らしい事であろう。そしてある時ハッと、すべての命の大切さ、ご先祖様のご恩、そして大いなるみ仏の存在を感じる瞬間が来るかもしれない。理屈では無い、体験から感得する境地をも大事にしていきたい。



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