現代人の法話 
〜 「良い欲と悪い欲」 〜

 9月の「いきいき勉強会」は初の対談形式のため大変緊張しましたが、皆様のアンケートではおおむね好評でホッとするのと同時に、一方で反省点も多々ありました。
 そのうち「人類は欲の力で科学を発展させて来ましたが、仏教では欲を否定するのはなぜですか?」というご質問に充分なお答えが出来ず、ここで改めてお答えさせて頂きます。
 当日は「欲はもっともっとという貪りになるので否定、良い欲は肯定する」という主旨をお答えしましたが、それだけでなく「欲は苦しみの原因になるから」という大事な事を補足します。
 そもそも仏教はお釈迦様自身の心の苦しみを取り除き、平安を求める所から出発しました。その結果「たとえ貨幣の雨の降らすとも欲望の満足される事はない。「快楽の味は短くて苦痛である」と知るのが賢者である」と言われた様に、人の欲望はもっともっとと限りがなく、一度手に入れてもまたすぐに次の欲が生まれ際限なく、かえって苦しみを生む事を明らかにされ、貪りの欲を否定。苦しみとは理想と現実のギャップから生じる事を卓見されたのです。それ故お釈迦様は「欲望より憂い生じ、おそれ起きん。欲望を離れし人に何の憂いやおそれあらん」「足ることを知る者は、身貧しけれども心富む」「むさぼる人は貧しく、ほどこす人は豊かに生きる」等の言葉で避けるべき悪い欲と自己の向上、人のためになる等の良い欲とのバランスを説かれたのです。



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