現代人の法話 
〜 「二尊(にそん)〜阿弥陀仏と釈迦仏〜の教え」 〜

 あなたは、近龍本堂のご本尊・阿弥陀仏様の裏側、背面に何があるのかご存知でしょうか?……答えは、仏教を開かれたお釈迦様の御影(みえい)(仏画)です。
 3年連続で規模を縮小し開催しました『呑龍さま縁日』、今年は案内・解説、昨年は探検ツアーとして行った参詣者への本堂等のご案内でご指摘をうけ、あらためて気付けた有り難い思いがありました。それが冒頭の本堂におけるご本尊・阿弥陀仏立像とお釈迦様の御影が背中合わせにお祀(まつ)りされている由縁(ゆえん)でした。
 実はかつてお釈迦様はお弟子の一人に「死後の世界はどうなっているのですか?」とご質問を受けた際、「無記(むき)」とお答えになりました。無記というのは、お答えにならない、無回答という意味で、その質問は仏道修行に直接関わらない、そんな事よりも自身の修行に励みなさいという無言の教えが込められていたと推察されています。しかし浄土三部経等に説かれた阿弥陀仏信仰には『死後の世界』すなわち西方極楽浄土の事がしっかりと記されています。この矛盾(むじゅん)をどう考えるべきなのか?長らく私自身の疑問でもありました。そしてお釈迦様の説法が対機(たいき)説法、すなわち人々の性格、能力等に対応して分かりやすく教えを説かれる事を知り、末法の時代に生きる凡夫(ぼんぶ)である私達が心穏やかに、安らかに生きていかれるために、敢えて死後の世界をお説きになられたものだと納得する事が出来ました。
 浄土宗は『二尊教(にそんぎょう)』つまりお釈迦様と阿弥陀様の教えであり、極楽浄土、お念仏の教えをお釈迦様が出世の本懐(ほんがい)≠ニして説かれたものです。これを二尊が背中合わせ、すなわち表裏一体になっている姿を参詣者にご説明する中で、その象徴であった事にハッと気付かされ、あらためて有り難く感じたのです。
 新しい年を迎えるに当たり、本年も二尊〜阿弥陀様、そしてお釈迦様の教えを尊び、心の安寧、豊かさを目指して精進して参りたいと思います。



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