現代人の法話 
〜 「小さな喜びを育めば」 〜

 私が中学3年生、高校受験真っ只中の時の話です。息抜きであの名作ドラマ『北の国から』を見ていたら、雪で閉ざされていた舞台の北海道・富良野に、雪解けのせせらぎ、小さく可憐な花、鳥のさえずりなど春の兆[きざし]を感じさせる美しい映像と音楽が流れてきました。そして私の心には「この勉強漬けの暗い生活も間もなく終わり、暖かな春が来るんだなぁ」と何とも言えない喜びと希望が生まれ、以後 苦境にある時は必ずそれが思い出されるのです。
 現代はストレス社会と呼ばれ、誰もが程度の差こそあれ様々なストレスを抱えています。解決にはその原因を取り除くのが一番ですが、それが出来ない時は「喜びを感じる能力・センサー」を磨き、心を休ませる方法を多く持って欲しいと思います。
 仏教で説く幸せ=心の平安は、満足(喜び)×感謝÷欲求で示されます。欲求はストレスを生む原因で同じ種類ですから、これが変わらなければ、分子の満足、喜び、感謝というポジティブな感情を増大させるのが幸せを大きくする方法です。
 現代人には「喜びを感じる能力」を磨く機会がほとんどありません。小さな頃から様々な面で他人と競い、それは社会に出てからも続きます。競争のための努力は充実感も、実った時の満足感も素晴らしいですが、それだけではストレスにもなり、時々心を休ませる方法が加わる必要があります。と言っても贅沢な旅行や食事などは必要ないのです。近所に散歩に出る、暖かな日差しを浴びる、道端の小さな花を愛[め]でる、近しい方と会話を楽しむ、家で好きな食事を楽しむ、お好みの本、TV、映画、美術書等を楽しむ、寒ければ暖かい飲物で暖をとり、暑ければシャワーを浴びてさっぱりする等々、ささやかな喜びを五感で感じるセンサーは、元々人間誰しもが持っており、それをさらに磨く事で同じ状況でも幸福感は増やせるのです。
 春が来ます。小さな喜びを育み、積み重ね、大きな幸せがあなたに訪れますように。拝



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