現代人の法話 
〜 「私がお伝えしたい事」 〜

 ある布教研修会で問われた。「あなたはパン屋さんで、最高に美味しいパンが完成した。どうしたら大勢の人にそれを食べてもらえるか?」正解は一つに限らない。お店に試食コーナーを設けたり、広告を出したり、またSNSやインターネットで口コミを広げるという手もあるだろう。しかし絶対に必要な条件が2つある。1つ目はあなたがそれを本当に美味しいと実感している事、そして2つ目は自身が行動する事である。美味しいと思えないものを人に勧めるのは嘘でありそんな虚[むな]しい言葉は他人様には必ず見透[みす]かされるし、行動が無ければ何も起こらない。
 さてこれは例え話である。浄土宗の布教の研修会であるから仏教の教え、さらにはお念仏をどう弘めるかを考えるための課題である。そしてそのためには自分自身が仏教の教え、お念仏を心から素晴らしいと思う事、そしてその体験、感動を伝えるための様々な工夫を凝らした行動が必要な事を教えてくれている。お釈迦様は「麗しくあでやかに咲く花でも、香りのないものがあるように、善く説かれた言葉でも、それを実行しない人には実りがない」と諭され、宮澤賢治氏は「人の心を本当に動かすには、その人の体験から滲[にじ]み出る行いと言葉しかない。知識だけでは人は共感を感じないからだ」と語られたように、自身の感動や体験から生まれる言葉や行動でなければ人には何も伝わらない。
 来たる令和6年は浄土宗開宗850年の記念の年である。これらの事を心に刻み込み、自身がどう仏教の教え、お念仏に救われているか、その体験と感動を皆様にお伝えしていきたいと思う。



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