現代人の法話 
〜 「100歳まで生きる方法」 〜

 江戸時代の聖僧・良寛和尚にこんな逸話がある。ある時、お金持ちの老人が良寛さんのもとを訪れ、神妙な顔で尋ねた。「私は今、80歳です。お金は十分にあるし、もう何をしたいという事もありません。ただ、一つだけ自分の力ではどうしても叶わない事があります。何としても100歳まで生きていたいのです。何か良い工夫があったら教えていただきたい」と。
 良寛さんは「何かと思えばたやすい御用だ」と笑顔で答え「もう100歳まで生きたと思いなさい。そうすれば100歳まで生きた事になるのだ。そう思って一日生きれば、一日儲かった事になる。こんなうまい話はない」と言って大きな声で笑ったそうである。
 老人は自分の欲の深さを悟り、その日その日を楽しく、有意義に送るようになったそうである。
 誰でも長生きを願う。おそらくこの老人は食事や薬、運動などの健康法を良寛さんから教わり、多少の我慢や犠牲が必要な事でも長生きの為に実行するつもりでいたのだろう。しかし良寛さんは長生きの為に何かを我慢して、今を犠牲にする≠ニいう考え方から一日一日を、今をしっかり生きていく≠ニいう姿勢への転換をユーモアをもって薦められた。長寿というものがは目的ではなく、結果であるという事を教え諭して下さったのである。また名著『自省録』(推薦図書で紹介)では「完全な人格とは、激する事もなく、麻痺する事もなく、何かのふりをする事もなく、毎日を人生最後の日として過ごすことにある」と毎日を人生最後の日として有意義に過ごせ≠ニ訓戒されている。
 新しい年のはじまりにあたり、一日一日を大切に過ごす事を目標として進んでいきたい。
※参考図書…座右の寓話(戸田智弘著)、自省録(佐藤けんいち編訳)



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