現代人の法話 
〜 「自己に克ち、心の主となれ」 〜

 先日、浄土宗開宗850年を記念して制作した小冊子『お釈迦さまの金言』には私が感銘を受けたお釈迦様の言葉が並び、その一つに「戦場において百万人に勝つよりも、ただ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である」というものがある。
 これは、仏教が目指す心のやすらぎ≠ニいう視点から見れば、他人との戦い、例えば受験や出世、財産の多寡などよりも、自己に克つ≠キなわち貪(むさぼ)る欲や醜い嫉妬、邪まな誘惑や怠惰に負けない心を持ち、自分の心をコントロールする事こそ、最高の価値がある事を教え諭してくれている。
 言い換えれば、相手のいる勝負事よりも、自分自身と勝負をする、すなわち自分の目標を掲げ、他人の成果や評価に左右される事なく着実に精進する。またその道程で自身の負の心〜貪欲や怒り、誘惑の心などを制する事こそが心のやすらぎ≠ノは重要で、それが結果的に他人の信頼や尊敬の念を受け、名声や社会的地位が自然と得られる事も暗に示している。そんな生き方には昨今の勝ち組・負け組などという評価軸、世俗のレッテルなど無意味となる。
 また別のお釈迦さまの言葉に「心は抑え難く、軽々とざわめき、欲するがままにおもむく。この心を整えてこそ安らかさが得られる。心に従わず、心の主となれ」ともある。考えてみれば自分の心感情≠ニは本当にコントロールが難しい。欲望や怒り、嫉妬などは、ふとしたきっかけで暴走する事もあり心のやすらぎ≠ニは対極にある。自己に克ち、心の主になる&ァ教の示す新たな価値観がここにはある。
(小冊子は残数僅少。興味のある方は寺務所までお申し出下さい)



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