現代人の法話 
〜 「比較は喜びを奪う(2)」 〜

 前回の法話において、人は他人と比べる事を止められない存在であるが、それに過度にとらわれ過ぎると、自分の心が他人に振り回されている状態となってしまい心の安らぎ≠竍喜び≠ェ失われてしまう事を述べてきました。
 そもそも仏教―お釈迦様は、生まれてすぐに7歩歩んで(六道を超えた仏の境地を暗示)「天上天下 唯我独尊(ゆいがどくそん)〜世界中で私という存在は唯一人、故にすべての人それぞれが尊い」と宣言したと伝わり、人はそれぞれ唯一無二の個性を持った存在で、人と比べる必要などは無く、すべての人が尊く素晴らしい存在であるという仏教の基本的な人間観を、ご誕生直後に高らかに指し示されたのです。
 また浄土三部経の一つ『阿弥陀経』の一節には「極楽浄土には美しい池があり、その中に咲く蓮の華は、青色のものは青い光を放ち、黄色のものは黄い光を放ち、赤色のものは赤い光を放ち、白色のものは白い光を放ち、それぞれが何とも言えないほど清らかで芳(かぐわ)しい」とあり、人も蓮の華と同じで、それぞれが様々な個性・特性を持っており、それを光を放つように自分の人生において活かしていくべきである事を蓮を比喩(ひゆ)として諭して下さっています。
 この考えを分かり易い言葉で驚く程トレースしているのがSMAPの人気曲『世界に一つだけの花』で、その一節「僕らは世界に一つだけの花、一人一人違う種を持つ、その花を咲かせることだけに一生懸命になればいい」は、他人と比べ、競う必要など元々無く、自分自身が持つ唯一無二な種〜個性・特性〜を花開かせる事こそが喜び∞心の安らぎ≠ノつながるという仏教の教えに通じるものを感じます。



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