連星

結婚して夫婦になると二人三脚。お互いに離れることなく一緒に生活していくことになります。そこから連想するのは「連星」という天体です。

太陽は、1個の恒星が単独で宇宙空間に存在しています。独身の星ですね。ところが、2つの恒星が接近して存在している例も多くあります。その場合、2つの恒星が全体の重心の周りを互いに回っています。そのような2個1組の恒星を「連星」と言います。
どちらかに地球のような惑星が付いていた場合、そこから見ると太陽が2つあるわけですね。
すべての星のうちの1/4が連星だと言われています。生まれたばかりの星については、半分以上が連星だそうです。3個一組とか4個一組以上の連星もあります。

性能のいい天体望遠鏡を使えば、眼で見ることができる連星もあります。連星を肉眼や低い倍率で見ると1個の星に見えますが、高倍率にして見ると2つの星がほんの少しのすき間をあけて、くっついて並んで見えます。ただ、望遠鏡で見て2つに分かれるのは、かなり間の離れた連星だけです。接近した連星はどんな望遠鏡で見ても1個にしか見えません。(注)
初心者にも見つけられて、小さな望遠鏡でも2個の星が並んで見える連星があります。はくちょう座のくちばしの星、「アルビレオ」です。星の色がオレンジとブルーでとてもきれいです。望遠鏡を買ったら、月と惑星の次に見たい星です。

2つの星が接近して並んでいると星の色の違いがよくわかります。星って、みんなカラフルな色が付いているんですよ。でも、みなさんは星に色が付いているって感じたことがほとんど無いと思います。以前、ちょっとお話ししましたが、人間の目はすばらしい能力を持っています。明るいところでは感度は低いですが、細かいところを見たり色を識別する能力が高くなっています。暗いところでは、色を識別する能力は低くなりますが、感度が大幅に上がります。
そうなんです。人間の目は、夜は色を識別する能力を犠牲にして暗いものを見る能力を上げているんです。もし、夜も目の感度が昼間と同じだったら、星は暗すぎてほとんど見えないはずです。夜は色を識別する能力かなり落ちているので星の色がわからないんです。
ところが、2つの星が接近して並んでいると星の色の違いがわかります。これも人間の目の優れた能力なのでしょう。
星の色の違いは表面温度の違いです。温度が低い星は赤く、高い星は青く見えます。赤い星は3000度ぐらい、青い星は1万度ぐらいです。(太陽は6000度で黄色)


  (注) ちょっと難しい解説です
次の場合、1個にしか見えない星でも連星であることがわかります。

ひとつは連星の公転軌道面が地球の方を向いている場合です。明るい星と暗い星の2個の連星だった場合、明るい星の前を暗い星が横切ったり、暗い星が明るい星の裏側に隠れたりします。この時、星の明るさが変わります。2個とも見えている時が一番明るくて、どちらかが隠された時に暗くなります。それぞれの星は一定の速さで公転しているので、規則的に暗くなる時があります。このような連星を「食連星」といいます。代表的な食連星は、ペルセウス座のアルゴルです。

連星は互いに公転しているので、地球に近づく方向に動いている時と遠ざかる方向に動いている時があります。光のドップラー効果で、スペクトルの輝線や暗線の位置が変わります。星のスペクトルを調べれば、連星であるかどうかわかります。こうしてわかる連星を「分光連星」と言います。

連星の一方がブラックホールの場合があります。この場合、ブラックホールではない方の星の表面にある物質がブラックホールに吸い込まれていきます。吸い込まれる直前にX線を出します。これを観測すると、普通の星+ブラックホールの連星であることがわかります。


反射望遠鏡で見たアルビレオ(上) と アルビレオをかたどったネックレス(下)

唯一(だと思います)、天体望遠鏡を使わずに、肉眼で見える連星があります。おおぐま座の「ミザール」です。北斗七星の柄の先から2番目の星。これは4連星ですが、2つが明るい星なので、ふたつだけ肉眼で見えます。昔はこれを視力検査に使っていました。ミザールが2つに見えた人は「目がいい」とされました。視力が1.0ぐらいあれば2つに見えます。今の時期、ミザールが見やすい位置にあるので、2つに見えるかどうか試してみてください。

連星は互いに運動していますから、2つの星の間隔が変わります。でも、一般的な望遠鏡で見える連星の場合、10年以上間をおかないと間隔が変わったことがわかりません。


明るい星で連星になっている主なものは次の通りです。

  おおいぬ座のシリウス
  こいぬ座のプロキオン
  ぎょしゃ座のカペラ(4連星)
  おうし座のアルデバラン
  おとめ座のスピカ(5連星)
  しし座のレグルス(4連星)
  さそり座のアンタレス
  はくちょう座のアルビレオ(3連星)
  ふたご座のカストル(6連星)
  こぐま座のポラリス(北極星)(3連星)
  オリオン座のリゲル(3連星)
  ペルセウス座のアルゴル(3連星)
  おおぐま座のミザール(4連星)
 



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