中秋の名月

秋は晴れの日が多く、空気も澄んでいます。季候もいいし、月を眺めるにはちょうどいい時期です。今日は中秋の名月。日没とほぼ同時に東から丸い月が昇ってきます。
ところで、お月見はなんで秋なのでしょう。最初に書いた理由だけではありません。

夏の満月は空の低いところにあります。夏の空の低いところは、薄雲やモヤが多いので、月はあまりきれいに見えません。木や山の陰になってしまうかもしれませんし。
それに対して、冬の満月は高いところにあります。ほとんど真上近くまで上がります。真上に行ってしまうと家の中からでは見えなくなります。月が昇ってくるのも北東方向からなので、東の窓からなら見えますが、南の縁側からでは見えません。
秋はその中間で、ちょうど見やすいところに月があります。東から昇って南の中天を通り、西に沈みます。お月見は南向きの古い民家の縁側から見ると風情がありますね。縁側の縁(ふち)に座ってお月見ができるのは秋です。
現在だと、南向きのリビングの前にウッドデッキを作って、そこにテーブルを出してお月見というのがちょっとした贅沢でしょうか。そのシチュエーションでも、月は秋が一番いい位置にあります。蚊に刺されることも少ないですし。
実は、春分の日の頃(3月20日頃)も同じあたりに月があります。しかし、その時期はまだ寒いのでお月見という雰囲気ではありません。

正確に言うと今日(2012年9月30日)の満月は12時19分。昼頃です。夜に見る月は、満月を過ぎて端の方が欠け始めています。我々が月を眺める頃にちょうどまん丸になることは少ないのです。肉眼で見てまん丸に見えても、望遠鏡で見ると欠け始めているのがわかります。望遠鏡で見ても形は丸く見えて満月なのですが、別な理由で欠け始めているのがわかるのです。

ぴったり満月の時は、月は真正面から太陽の光を受けています(*注)。正面から光を受けると影ができません。月面に無数にあるクレーターに陰がありません。陰がないと凹凸がわからないのでクレーターはほとんど見えません。ところが満月を少しでも外れると、縁の方のクレーターに影ができます。月の西側か東側の縁に陰のあるクレーターが見えているときは、満月ではないということがわかります。

   *注 
厳密に月が太陽の光を真正面から受けるときは、間に地球がありますから、月面に地球の影が映ります。つまり、月食になります。
月食ではない普通の満月の時は、地球の陰が月の上側か下側を通過します。ですから、正確に真正面から光を受けている月というのは見ることができません。

満月には模様がありますね。月の「海」と呼ばれるところが黒く見えています。月の模様は何に見えますか?
日本では古くからウサギが餅つきしていると言われてきました。外国では他の見方があります。
  南ヨーロッパの海沿いの国々では「片腕が大きいカニ」
  欧米の一部の地域では「本を読む老婆」
  アラビアでは「吠えるライオン」
いずれにしても、肉眼で月の模様がこれらの形に見える人は視力がいい人です。現代の日本人で月の模様がはっきり見える人は多くはないようです。乱視があると月がいくつにも重なって見えます。

満月は、東の空から昇ってくる時と南にある時、西に沈む時では模様の向きが違います。
日本では昇ってくる月を眺めることが多いので、東にある月は、ウサギが餅つきをしている姿に見やすいのでしょう。同じ角度で本を読む老婆にも見えます。
南の空にある時は吠えるライオン。西にある時は片腕のカニとして見やすいと思います。

中秋の名月の翌日でも、月はほとんど満月に近い丸い形で見えています。月の模様が何に見えるか、見てみてください。

 



戻 る