天体写真

今回は趣向を変えて、「ベリークラシック コズミックジャーニー」の「星の話」の台本をほぼそのまま載せます。台本は私が書いています。こういう形で、きっちり台本がある時もあれば、何の話をするという大枠だけあって、その場でアドリブで話すこともあります。

鹿島田さんって、すごい人ですよ。アナウンサーもしくはパーソナリティーとして、プロ中のプロです。ラジオから流れる声だけを聞いていると、かわいい声でかわいい感じのおねえさんですが、その裏側では緻密で正確なプロの仕事が行われています。
この番組だけではありませんが、鹿島田さんの仕事ぶりにはいつも感心させられています。

・・・閑話休題
以下、台本です。


鹿島田 今日のテーマは「アート」ですが、天体に関するアートというと何かありますか?


奈良部 日本では40年以上前から、「天体写真」というアートの世界がある。
     アマチュアが写した美しい星の写真が雑誌や本に載っている。インターネット上にも多数公開されている。

鹿島田 (               ) ←こういうところは、鹿島田さんのアドリブです

奈良部 天文学者は研究のために天体を撮影する。その場合、正確さだけが重視され、見た目が美しいかどうかは問題にならない。
     それでも、大きい望遠鏡を使って写した星の写真は美しい。
     日本のアマチュア天文家は、それを見てあこがれ、美しい星の写真を追求してきた。

鹿島田 星の写真を撮るって難しい?

奈良部 昼間、景色や人の顔を撮るなら、「カシャ」っていう一瞬で写る。
     星は暗いので、フィルムやCCDに長い時間光を当て続けなければならない。

鹿島田 長い時間というとどれくらい?

奈良部 昔のフィルムを使うカメラの場合は、30分とか1時間とか。
     弱い星の光をフィルムに貯める。

鹿島田 1枚の写真を撮るのに30分とか1時間かかる?

奈良部 はい。その間に星は動いていく。カメラを星の動きに合わせて動かさなくてはいけない。そのための装置が必要で、かなりのお金と労力が必要。

鹿島田 労力というと、たとえばどんな?

奈良部 私が大学生だった頃、30年以上前。冬の寒い時期に清里に星の写真を撮りに行った。

     一晩中外で星の写真を撮った。一晩かかっても最大、10枚ぐらいしか撮れない。
     気温は-20度。その中でカメラを星に合わせて動かす装置を手動で動かし続ける。
     モーターで自動的に動かすものは高かったので、大学生には買えなかった。
     体は体温を維持するために脂肪を燃やし続ける。結果、一晩で体重が2kg減った。

鹿島田 ( それはダイエットにいいですね ) ←(  )の中に何か入っているところは、こんな感じのことを言ってください、という意味

奈良部 ひと晩で2kg落ちるので、すばらしいダイエット。
     でも、命がけになる。途中で寝たら、二度と目を覚まさないかも。

鹿島田 (               )

奈良部 現在はデジタルカメラや望遠鏡の性能が上がって、5分露出すれば、フィルムに1時間露出したのと同等以上に写る。
     さらに、放っておいても自動的に星の動きに合わせてカメラを動かしてくれる装置がある。
     楽になったが、そうなると、さらに美しくするために別な努力を重ねている。

鹿島田 (               )

奈良部 星の写真を撮ること自体は簡単になったが、反面、地上の照明が増えて、夜空が明るい。天の川が見えない。
     見えないものは写らない。
     地上の光りが少ない山奥まで写真を撮りに行ったり、撮った写真を美しく見せるために、パソコン上で画像処理が必要だったり。
     現在はこちらに労力と知識が必要。

鹿島田 (               )

写真は「ばら星雲」

オリオン座の東側にあります。直径が満月の2倍ぐらいあって比較的大きな天体ですが、このような赤い星雲は肉眼では見えません。写真に写して初めて見ることができます。
 



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