ノーベル賞


今年は日本人が二人、ノーベル賞をもらいました。大村智(おおむらさとし)さんが生理学・医学賞で、梶田隆章(かじたたかあき)さんが物理学賞でした。梶田さんは、東京大学宇宙線研究所の所長です。スーパーカミオカンデを持っているところです。
以前にも、そこで研究していた日本人がノーベル賞をもらいました。スーパーカミオカンデの前身の観測装置、カミオカンデを使って2002年に小柴さんがノーベル賞を受賞しました。どちらもニュートリノの研究です。

ニュートリノという素粒子が存在することは、理論的に予言されていましたが、小柴さんが実際に存在することを初めて発見しました。ニュートリノがあるか無いかで、宇宙の構造がまるで変わってしまいます。小柴さんが、「存在する」ことを発見したのは、科学の大きな進歩でした。
小柴さんのおかげでニュートリノが存在することはわかったのですが、ニュートリノには質量が無いと言われていました。しかし、梶田さんはニュートリノに質量があることを発見しました。質量があるか無いかで、物理学の理論が大きく変わります。梶田さんが、「ある」ということを発見して、科学を大きく前進させました。

スーパーカミオカンデというのは、昔、神岡鉱山というのがあって、その廃坑跡の地下深くの真っ暗なところに、大量の純粋な水を溜めています。ニュートリノが水の中を通過するとき、ごくまれに水分子と反応して弱い光を出します。その光を検出する装置です。人間の目ではまったく見えない、ごく弱い光を検出します。光をとらえるのは光電子増倍管というもので、浜松フォトニクスという会社が作っています。それが無かったら、小柴さんも梶田さんもノーベル賞をもらえませんでした。ノーベル賞を2つ取った会社・・・といいたいところですが、実は3つ取っています。
もうひとつは2013年に、ヒッグス粒子の発見で、アングレールさんとヒッグスさんがノーベル賞をもらいました。このヒッグス粒子を発見した検出器にも、この会社の製品が使われていました。


水を入れ始まったときのスーパーカミオカンデ
作業員が乗ったボートが水面に浮かんでいる
内面に取り付けられた丸いものひとつひとつが光電子増倍管

東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設HPより

日本にはすごい会社があります。浜松フォトニクスだけではなくて、純粋な水を作る装置はオルガノという会社の製品だし、ノーベル賞をもらった観測装置には、日本の会社の技術がたくさん使われています。
ハワイにある「すばる望遠鏡」に取り付けられたHSCという超高性能カメラのレンズは、キャノンの宇都宮工場で作られました。受光素子はやはり浜松フォトニクス製、巨大なすばる望遠鏡を精密に動かす装置は三菱電機製です。それぞれが他の会社では作れないものです。こちらで行われている研究でノーベル賞を取る可能性もあります。
また、島津製作所で分析装置を作った田中さんは、その装置そのものでノーベル賞をもらいました。やっぱり、日本の技術って、すごいですね。









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