天体望遠鏡


天体観望会などで、解説をする機会がたまにあります。そういうときに、星についての知識がほとんどない人から不思議な質問を受けることがけっこうあります。
たとえば、天体観測会で曇ってしまったとき、曇っているのに来てくれた人が、一応準備してあった天体望遠鏡を覗いて、「どうして何も見えないんですか?」
曇っていたら星が見えないのは当然ですから、その方が何を聞きたいのか理解できないことがありました。でもその後、わかりました。世の中には、曇っていても、雨が降っていても、天体望遠鏡で見れば星が見えると思っている人がけっこう多いのです。

星は肉眼でも天体望遠鏡でも、晴れているときにしか見えません!!
さらに、薄曇りやどんよりした晴れではダメで、快晴の時にしか、きれいな星空は見られません。
また、空に月が出ているときもダメです。月と惑星は見られますが、暗い星は月の光で消されてしまって、見えません。

きれいな星空が見られる機会は、意外と少ないのです。ここ数年、天気が悪いので、月に3・4回しか見られないことも珍しくありません。天体観望会がそういう日、そういう時間帯に当たる確率はすごく低いのです。観望会を行っても、晴れる確率の方がずっと少ないので、あまり大きな期待をしてその日を待たない方がいいと思います。開催する方も曇る前提で、曇ったときに何をやるかを必ず考えています。

初心者にありがちな望遠鏡についての質問で一番多いのは、「この望遠鏡の倍率は何倍ですか?」 というやつ。へんな質問ではないと思う人もいると思いますが、すごくへんな質問なのです。
星を見せている側の人は、望遠鏡がそのとき何倍になっているかは、あまり気にしていません。聞かれてから、「え~と・・・」 と言って計算します。


望遠鏡の倍率は  対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離  で計算できます

たとえば、対物レンズの焦点距離が650mmで、接眼レンズが17mmの場合、650÷17という計算をします。これが暗算でできなくて困るわけです。だいたい40倍ぐらいですかねぇ・・・ と答えると、質問した人は、なんでそんな簡単なことが答えられないんだ! おまえは素人か!
みたいな顔をされます。
天体望遠鏡は、1台1台倍率がひとつに決まっていると思っている人が多いのです。

接眼レンズを何種類か持っていれば、倍率は変えられます。さらに、天体望遠鏡の性能は、倍率ではなくて対物レンズの直径ですべて決まります。直径が大きければ大きいほど、明るく見えるし、細かいところまで見えるようになります。高い倍率にも出来ます。対物レンズが小さいのに、倍率だけをいくら上げても、覗きにくくなるだけで、細かいところが見えるようにはなりません。もし、望遠鏡の性能を聞きたい場合は、倍率ではなくて、対物レンズの直径を聞いてもらいたいわけです。
見る天体によって適切な倍率があるので、接眼レンズを取り替えながら見ます。星を見る人は、どの接眼レンズを使っているのかが大切で、そのとき何倍になっているかはあまり気にしていません
もちろん、だいたい何倍ぐらいなのかは把握してますが
倍率は、30倍、50倍、100倍、150倍、200倍 ・ ・ ・ これくらいの刻みで把握していればいいのです。望遠鏡を覗いて、80倍と100倍は違いがわかりません。


下の写真は私の接眼レンズケース。これだけの種類の接眼レンズが入っていますが、これでもまだ一部です。 







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