巨大天体望遠鏡


今日は大きな天体望遠鏡のお話です。大きいというと、どのくらい大きいものでしょう?
「天文台」と呼ばれるところには、一般の人が持っている天体望遠鏡とは一線を画した、大きな望遠鏡があります。ななつがたけ北天文台の望遠鏡も大きいと言えますが比較の問題で、個人が持っている望遠鏡としては大きい方です。個人ではなくて、天文学の研究機関が持っている望遠鏡は桁違いに大きいものです。

日本が持っている最大の天体望遠鏡が「すばる望遠鏡」で、反射鏡の直径が8.3 mあります。これは1枚のガラスの鏡でできている反射望遠鏡としては、世界最大クラスです。「クラス」というのは、同等のものが他にもあります。10cm大きい直径8.4 mがあり、10cm小さい8.2mもあります。10cmの差で世界最大を競っているわけです。わずかな差でも、世界最大を名乗りたいのでしょうが、1枚のガラスの鏡で製作できる望遠鏡の上限が、そのあたりの大きさになるのだと思います。
「1枚の鏡」とことわっているのは、複数の鏡で作られた望遠鏡もあるわけです。8mよりも大きな反射鏡を作りたいときは、複数の鏡を蜂の巣のような形に寄せ集めて望遠鏡を作ることができます。現在、世界で一番大きいのは、「カナリア大望遠鏡」というもので、直径が10.4 mです。これは、30数枚の鏡を寄せ集めて、直径10.4 mにしています。

ところが、10mを遥かに超える、直径30mの巨大反射鏡を使った望遠鏡が、今、作られつつあります。すばる望遠鏡と同じハワイ・マウナケア山に設置され、日本・アメリカ・カナダなどの国が共同で製作しています。この望遠鏡の通称が「TMT」。TMTというのは、「Thirty Meter Telescope」の略。つまり30mの望遠鏡という、そのまんまの名前です。巨大望遠鏡の割にはつまらない名前ですね。
TMTの主鏡は、一辺72センチの六角形の鏡を492枚組み合わせて作られます。このTMTの製作には、日本が大きな役割を担っています。


左の小さな六角形の1つが右の写真 (キャノンWebサイトより)


反射鏡の直径が30mもある大きな天体望遠鏡を製作するには、分割された鏡、1枚1枚を、高い精度で研磨する技術が必要です。そして、1枚1枚の鏡を正確に1つの焦点に向けなければなりません。巨大で猛烈に重たい望遠鏡を正確に動かす技術も必要です。
反射鏡の材料の特殊なガラスは、日本の「オハラ光学」という会社が作ります。オハラは平成31年度までに、予備を含めた特殊ガラス574枚を準備する予定です。そのガラスを精密に研磨するのは、キャノンの宇都宮事業所です。そんなすごいものが宇都宮で作られているのです。
巨大な天体望遠鏡を、正確に目的の星に向けるための架台を製作するのは三菱電機です。これまでに例のない巨大天体望遠鏡は、日本の技術によって完成するわけです。


TMTが格納されるドーム完成予想図 国立天文台提供







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