重力波


今年の2月に「重力波」が検出されたというニュースがありました。これはすごいことなのです。たぶんノーベル賞でしょう。

重力波というのは、どういうものなのでしょうか?
アインシュタインの一般相対性理論によると、物体が動くと、「重力波」という光と同じ早さで進む波が発生することになります。一般相対性理論で予言された現象が、これまでに次々と発見されてきて、最後に残っていたのが重力波です。これを直接検出できれば、相対性理論が正しいことが証明されます。
物体の位置や動きは、ニュートンが考えた力学の理論で説明できますが、それはあくまで近似値です。物体の本当に正しい位置や動きは、相対性理論を使わないと求められません。身近なところでは、GPSの位置情報は相対性理論を使って計算されています。


中性子星の連星が回転することによって放出される重力波のイメージ図   (図:KAGAYA)


では、どんなときに重力波が検出できるのでしょう?
重力波は非常に弱いものなので、相当大きなものが動かないと検出できません。太陽より重い星が加速度運動をすると、最新の科学技術を使った測定器で、何とか検出できる大きさの重力波が出てくるようです。
でも、星が加速度運動をすることがあるのでしょうか。私たちが地球上から見る星は、星が動いて星座の形が変わったりはしませんね。でも、広い宇宙の中で見ると、それぞれの星は特定の方向に、ほぼ一定の早さで動いています。何万年かの長い時間が過ぎれば、星座の形も変わります。でもそれは、加速度運動ではありません。普通なら、星の動きが大きく加速や減速することはありません。でも、希に加速することがあります。
それは、星がブラックホールに吸い込まれるときです。星はそれぞれ、いろいろな方向に動いていますから、ブラックホールに接近してしまうことがあります。そうなると、強い重力に引かれて、加速しながら引き寄せられます。そして衝突して合体します。このとき、強い重力波が出ます。今回の重力波の検出は、普通の星よりもさらに強い重力を持った、2つのブラックホールが衝突して合体したときに出たものだそうです。

そういういうことは、宇宙の中では頻繁に起こるのでしょうか?
太陽がある天の川銀河の中で同等のことが起こる確率は、10万年から100万年に1回だそうです。そんな確率なのに、今回、重力波が検出できたのは、奇跡的なことになりますね。でも、そうではありません。宇宙の中には、無数の銀河がありますから、太陽系に近い10万個以上の銀河を観測できれば、1年に1回の確率になります。

日本でも今年3月に、「KAGRA」という重力波検出装置が完成しました。神岡鉱山跡のスーパーカミオカンデのすぐ近くです。重力波の検出では、惜しいところでアメリカに先を越されてしまいましたが、日本の装置も無駄にはなりません。今回は、「重力波を検出した」というだけです。地球上の何カ所かに重力波の検出装置があって、複数の場所で同時に検出できると、それがどの方向から来たものかがわかります。

これまでは、光や電波で宇宙を調べてきたわけですが、これからは重力波という観測手段が加わるわけです。重力波を使った観測で、宇宙について、これまでわからなかったことがわかるようになるはずです。
日本のKAGRAが重力波を検出する日が待ち遠しいですね。


画像は国立天文台ホームページより

KAGRAは直行する長さ3kmのトンネル内に設置
 
パイプの中は真空になっていて、その中をレーザー光が飛ぶ







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