日本のロケット


今回は星や星座の話ではなくて、日本のロケットの話です。
去年は「下町ロケット」がヒットしましたね。実際、日本の町工場で作られているロケット部品もあります。
また、日本のH2ロケットが、宇宙ステーションに物資を運ぶ重要な役割を果たしています。去年の12月、宇宙ステーションに補給物資を運ぶ「こうのとり6号機」をH2bロケットで打ち上げました。アメリカとロシアの補給船が立て続けに打ち上げ失敗している中、日本の「こうのとり」が無事に宇宙ステーションに補給物資を届けました。こうのとりは、6号機まですべて打ち上げ成功しています。H2ロケットは優秀ですね。

日本の大型ロケットはH2aとH2bがあって、bの方が重い機材を打ちあげられます。H2以外に「イプシロン」というロケットもあります。どう違うのでしょう?
H2は大型ロケットで、H2bの場合、最大16トンの機材を宇宙に運べます。H2ロケットは液体燃料ですが、イプシロンは固体燃料ロケットで、約600㎏の機材を打ち上げられます。H2bなら16トンで、イプシロンは600キロです。運搬能力が全然違いますね。
H2ロケットには、2つまたは4つの補助ロケットが付きます。イプシロンは、その補助ロケットの1つを1段目ロケットとして利用しています。そのため、小さくて打ち上げ能力も低いわけです。

もっと小さい「SS-520」というロケットもあります。これは人工衛星を打ち上げるためのロケットではなくて、小さな観測装置を上空に打ち上げて、それが地上に落下してくる間に、いろいろな観測を行うという用途に使います。電柱ぐらいの大きさです。


SS520 4号機
JAXAホームページより


このSS520を改造したロケットで、小さな人工衛星を打ち上げる計画が進行しています。どのくらい小さいかというと、今回は東大が作った重さ3kgの人工衛星を打ち上げました。先ほどの16トンとか600kgとかに比べると、桁違いに小さいですね。
最近は機能を限定すれば、小さくても実用になる人工衛星が作れるようになりました。そういう小さな人工衛星を打ち上げるロケットの需要が出てきたわけです。SS-520は世界で一番小さい、人工衛星打ち上げ用ロケットになります。残念ながら、最初の打ち上げは失敗でした。SS-520は、打ち上げコストを下げるために、ロケット専用の高価な部品ではなくて、私たちが日常使っている電化製品や自動車などに使われる民生用部品を一部に使いました。それでも大丈夫なことを証明するための打ち上げでしたが、ロケット打ち上げ後に、通信が途絶えてしまいました。民生用の部品ではダメなのか、それ以外のところに失敗の原因があったのかは、今後の研究によります。

ところで、このSS-520の打ち上げ映像を見た人も多いと思います。この見た目は、ロケットというよりミサイルですね。ロケットとミサイルは同じものです。
H2などの液体燃料ロケットは、発射の準備に時間がかかりすぎるので、ミサイルとしては使えません。液体燃料ミサイルでは、発射準備をしている間に攻撃を受けて、破壊されてしまいます。どうしても、という場合は地下に隠さなければなりません。イプシロンやSS-520などの固体燃料ロケットなら、任意の日時に発射可能です。ミサイルとして使えるということです。
日本は、イプシロンやSS-520をミサイルとして使うことはないでしょうが、そういうものが日本にあることを、外国に見せておくことは、国防上、意味のあることです。日本のロケット打ち上げを見た外国首脳や軍が、「これは大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないのか!」と思うかもしれないし、日本ではあちこちで、地下鉄工事・トンネル工事をしていますから、「地下サイロを作っているのではないか?」とも思うでしょう。それが抑止力になります。

平和な世界が続いて、日本のロケットが宇宙開発のみの役に立ってほしいですね。









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