宇宙の果て



今夜は満月です。月が明るくて1等星と2等星ぐらいしか見えません。今日は星空の話は無しにして、宇宙全体の話をします。
宇宙全体というとスケールが大き過ぎますが、そのごく一部の話です。

まず、夜空は暗いですよね。
なんで暗いのでしょう?

太陽が出てないから。  ・・・ですか?
その答えだと、「ぼーっと生きてんじゃねーよ!」って、チコちゃんに叱られます。この話は、1ヶ月ぐらい前の「チコちゃんに叱られる」に出てきました。
たとえば、宇宙ステーションから見ると、太陽が出ていても宇宙は暗いです。もし、月面に立って空を見られれば、太陽が出ていても空は暗いです。空気がないところでは、太陽が出ていても空は暗いのです。ですから、夜空が暗いことと太陽は関係ありません。夜空というよりも、宇宙は暗いのです。

なんで?

答えは、「宇宙には果てがあるから」と、チコちゃんが言っていました。
宇宙に果てがあるから夜空が暗いと言われても、よくわかりませんね。
夜空にある星と星の間が、暗い空間です。でも、宇宙が果てしなく遠くまでつながっていたら、無限に星が重なって、星と星の間というのがなくなってしまいます。空は星で埋め尽くされてしまいます。正確に言うと、星ではなくて、銀河で埋め尽くされてしまいます。
夜空が銀河で埋め尽くされないのは、宇宙に果てがあって、星や銀河の数には限りがあるから・・・なのです。


宇宙の果てには、「ここで終わり」という、壁みたいなものがあるのですか?

あるのかもしれません。でも、そこにたどり着くことはできません。

あまりにも遠いからですか?

現実問題として、それもありますが、それはたいした問題ではありません。(遠いことは、たいした問題じゃないんです!)

私たちは、3次元の世界で生きていますが、それを写真に写すと、平面の世界、つまり2次元に置き換えられます。写真とか、雑誌の1ページの紙の表面とか、テレビ画面とか、そういう平面が2次元です。宇宙も2次元の世界に置き換えられます。でも、それらとは違う、別な2次元世界があります。
平面ではない2次元・・・  それは、風船みたいな丸いものの表面です。丸い曲面でも、表面だけなら高さがありませんから、2次元なのです。




丸く膨らむ風船を少しだけ膨らませて、表面にマジックでたくさんの点をまんべんなく描きます。その風船をどんどん膨らませます。このとき、点と点の距離はどうなりますか?

全部の点が互いに離れていきますね。宇宙を2次元で表すと、そのような風船の表面として表せます。宇宙は今、膨張していて、すべての銀河は互いに離れていっています。離れていく速さは、距離に比例します。近くにある天体同士はゆっくり離れ、遠くにある天体は速いスピードで離れていきます。これを「ハッブル・ルメートルの法則」といいます。

風船の表面だけを見ると、「中心」という場所はありません。宇宙には中心がないのです。もし中心があると、中心の向こう側とこっち側という関係ができてしまい、向こう側にある天体は、反対方向に進んでいるわけですから、速いスピードで離れていくことになります。宇宙の中では、天体同士が離れていくスピードは、距離のみに比例するので、宇宙に中心があってはいけないのです。

風船の表面をどこまでも、まっすぐ進んだら、どうなるでしょう?

元のところに戻りますね。宇宙はそうなっています。宇宙をどこまでもまっすぐ進むと、元のところに帰ってきてしまうのです。宇宙の果てに行くつもりで出発しても、元のところに帰ってきてしまうので、宇宙の果てには行けないのです。

宇宙を2次元で表すと、風船の表面になるという話は理解できたでしょうか?
では、2次元の宇宙に高さを付け加えて、3次元にしてみましょう。
風船の表面に高さを付け加えると、高さというのは、どっちの方向でしょう?

風船の表面も、ごく狭い範囲だけを考えれば、平面とみなせます。その面に対して垂直な方向が高さでしょうか?
もちろん、それ以外の方向は考えられないので、それを高さと言ってもいいでしょう。でも、その方向というのは、これから風船が膨らんでいく方向です。ですから、その方向は「未来」を表しています。ですから、風船の表面に対して直角な軸は「時間軸」なのです。宇宙には、縦・横・高さ以外に、「時間」という軸もあるのです。そうしたら4次元ですね。実は、宇宙は4次元どころではなくて、8次元の世界だとも言われています。時間軸までは想像できますが、残りの4つの軸って、どっちを向いているどんな軸なのでしょう。
そこはいくら考えてもわからないので、話を風船の宇宙に戻しましょう。風船の表面に対して垂直な軸が時間軸だとしたら、時間軸を逆に進むと、風船の中心に行けます。風船の表面が今の宇宙だとしたら、風船の中心というのは何でしょう?

宇宙は今から138億年前に生まれました。生まれたての宇宙は、ものすごく小さかったのです。風船の中心に行くというのは、時間を遡って、生まれたての宇宙にたどり着くことなのです。「時間」というのは、宇宙とともに生まれました。宇宙のないところには時間も存在しません。タイムマシンに乗って、138億年前に遡ると、もう、それ以上先には行けません。その先には時間が存在しないからです。タイムマシンは、138億年遡ったところで壁にぶつかります。そう! それが宇宙の果てにある壁なのです。
先に説明した通り、宇宙の果てには、宇宙船では行けません。宇宙の果てには、タイムマシンで行くのです。











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