いて座とブラックホール



8月中旬は、南の空にいて座が見えます。いて座は有名な星座ですが、南の空の低いところにあるので、見つけにくい星座でもあります。栃木県から見ると南の方向には、大宮、東京、横浜など、大きな都市が並んでいます。そこからの光で、南の空の暗い星が消されてしまいます。星座を形作る星には、暗いものもあるので、それが見えないと星座を線でつなげなくなります。

下の図は、今夜21時の南の空です。



いて座が、ちょうど真南にあります。星座の絵も表示しました。いて座は下半身が馬で上半身が人間、ギリシャ神話に出てくるケンタウロス族です。ケンタウロスが弓を引いている星座です。矢が向いているのは、さそり座。天のサソリが暴れたとき、それをやっつけるために、そちらに矢を向けていると言われています。

天文学的には、いて座のトピックは、何かありますか?

いて座は、私たちの太陽が含まれる、天の川銀河の中心方向にあります。夜空の中で、星が一番たくさんある方向で、天の川も一番濃く見えます。そして、いて座の天の川の向こう側に、銀河の中心があります。そこには、巨大なブラックホールがあることがわかっています。

ブラックホールと言えば、最近、ブラックホールの画像が初めて撮影されました。ブラックホールというのは、アインシュタインの相対性理論から、その存在が予想されていました。これまでは、X線などの観測から、間接的に「ブラックホールが存在するのであろう」ということはわかっていました。それが今回初めて、直接、ブラックホールの存在が確認されたわけです。ノーベル賞クラスの成果です。

ブラックホールというのは、光でも何でもすべて吸い込んでしまうのですよね。それが天の川銀河の中心にあるということは、星がみんな、吸い込まれてしまわないのでしょうか?

ブラックホールというのはその中心から、ある一定の距離の内側に入ると吸い込まれてしまいます。でも、そこに入らなければ大丈夫です。吸い込まれてしまう範囲は、そんなに広くはありません。




ブラックホールの画像は、真ん中が黒くて、その周りがリング状に光っていますよね。
どうしてブラックホールの周りが光るのですか?

近くにある星がブラックホールに近づき過ぎて、吸い込まれることが、実際に起こります。吸い込まれると言っても、一瞬にして、スポンと吸い込まれるわけではなくて、ブラックホールの周りをぐるぐる回りながら、次第に引き寄せられていきます。その時、星は、強すぎる重力で粉々に潰されてしまいます。星の残骸がガス状になって、ブラックホールの周りを回ります。その星の残骸から、電波やX線が出ます。ブラックホールの周りで光っているのは、星の残骸なのです。その時点では、電波などはブラックホールの外に出て行けます。まだ、ブラックホールから離れていますから。
今回は、世界中の電波望遠鏡で一斉に、ブラックホールから来る電波を観測して、ブラックホールとその周りを回っている星の残骸の画像ができました。

みなさんもブラックホールを想像しながら、いて座と天の川を眺めてみてください。










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