ボリソフ彗星



今、天文学者の間で、「ボリソフ彗星」というのが大きな話題になっています。ほうき星の彗星ですが、最も明るくなったときが15等星ぐらいで、大きな天体望遠鏡でも全く見えません。そんな暗い彗星が、なんで大きな話題なのでしょう?

彗星というのは、冥王星よりずっと遠く、太陽系の一番外側にあるオールトの雲と呼ばれるところから、太陽に向かってやってくる天体です。太陽系の一番外側からやって来ますが、太陽系の中の天体です。ところが、ボリソフ彗星は、太陽系の外からやって来た天体なのです。太陽系の外の宇宙空間から、太陽の方にやって来たわけです。彗星という名前ですから、ほうき星としての性質を持っていますが、太陽系の中にある彗星とは別物なのです。太陽以外の星の近くで生まれて、何らかの理由で、そこからはじき出されて、宇宙空間を彷徨った末、太陽に近づいてきた天体と思われます。

宇宙からの訪問者ですね。宇宙人が乗った宇宙船だったりしませんか?

宇宙戦艦ヤマトに、白色彗星帝国というのが出てきました。見た目には彗星の形をした、巨大宇宙船に乗った侵略者でした。でもボリソフ彗星は、地球からかなり離れたところを通過するので、地球を侵略する目的は無いと思います。太陽系の外で自然に生まれた彗星であり、太陽系の外にも、彗星が造られる環境があることがわかったわけです。



これまでに、太陽系の外から来た天体は、他にあったのですか?

つい最近、2017年に「オウムアムア」という天体が発見されました。これが太陽系の外からやって来た天体の第一号でした。オウムアムアは、太陽から遠ざかっていく途中に発見されました。そのため、詳しい観測はできませんでした。でも形は、たばこみたいに細長くて、彗星ではなくて、堅い材質でできていたようです。こちらの方が宇宙船みたいですね。
ボリソフ彗星は、太陽系の外から来た2番目の天体です。これを詳しく観測すれば、太陽系の外の情報が得られるのでしょう。2年の間に、2つも太陽系外からやってきた天体が発見されたのは、奇跡的なことです。これまでの天文学者の予想では、何万年かに1つあるかないかぐらいでした。その1つが今、太陽の近くに来ているわけです。今、世界中で観測されています。
先月末に、地球に一番近い位置に来ました。日本から見た場合、現在は、南の地平線に向かって下がっています。日本からは間もなく見えなくなるので、今度は南半球の国で観測されます。

ボリソフ彗星がどんな天体だったのか、観測結果が発表されるのが楽しみですね。










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