ベテルギウス



先週、オリオン座の話をしましたが、今回はその中の左上にある赤い1等星、ベテルギウスについてです。
以前にもお話しした超新星爆発が迫っている星です。迫っていると言っても、天文学的な数字ですから、10万年以内という程度の話です。そのため、私たちが生きている間に見られる可能性は少ないと言われています。ところが、去年の10月頃から、ベテルギウスに異常が発生しています。

異常というのは、ベテルギウスが暗くなりました。元々、明るさが変わる変光星なので、暗くなってもおかしくはないのですが、過去に例がないほど暗くなりました。ベテルギウスは冬の大三角の一角ですが、通常の明るさならば、夜空に見える恒星の中で9番目に明るい星です。それが先月は、23番目になってしまいました。その明るさでは1等星とは言えなくなります。冬の大三角のひとつが1等星ではなくなったというのは大事件です。

それは、超新星爆発の前兆なのですか?



そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。星が死ぬ前には、膨張して大きくなります。膨張すると温度が下がるため、暗くなります。その段階に入ったのかもしれません。でも、寿命末期の星は不安定なので、一時的な現象なのかもしれません。

ベテルギウスが超新星爆発すると、どうなりますか?

明るさが、猛烈に明るくなります。今、夕方の西の空に金星が見えています。一番星です。その明るさは-4等星ぐらいです。金星は昼間でも、注意深く探せば肉眼で見つけられます。ベテルギウスが超新星爆発すると、金星の100倍以上明るくなって、昼間でも楽に見つけられる明るさになります。逆に夜はベテルギウスが明るすぎて、他の星が見えづらくなってしまいます。月が出ている夜のような感じです。それが3ヶ月ぐらい続いて、その後、次第に暗くなって肉眼では見えなります。冬の大三角のひとつが消えてしまうわけです。

ベテルギウスが超新星爆発する瞬間を見たい人は、これから毎日、オリオン座を見ることになりますね。

その必要はありません。1日前に「明日爆発する」という予報が出ます。

どうしてわかるのですか?

超新星爆発は、星の中心近くで起こります。爆発で発生した光や熱などのエネルギーは、星の外側に向かって出て行くのですが、星の内部には、原子が高密度で存在しています。発生したエネルギーが原子にぶつかって跳ね返ってしまって、なかなか外に出られません。光が外に出てくるまでに、約1日かかります。
超新星爆発が起こったときには、ニュートリノという素粒子も大量に発生します。ニュートリノは原子とぶつからないで、全く抵抗なく星の外に出られます。そのため、ベテルギウスが超新星爆発したときには、ニュートリノが光よりも1日早く、地球にやってきます。
日本には、スーパーカミオカンデという、ニュートリノ検出装置があります。それがオリオン座の方から大量のニュートリノが来たことを検出すれば、その翌日にベテルギウスが爆発した光が届きます。
毎日外に出てベテルギウスを見なくても、「明日、ベテルギウスが超新星爆発する」というニュースが流れます。そんな日が来るのが楽しみですね。










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