アトラス彗星



3月・4月頃、「アトラス彗星」というのが話題になっていました。3月の予想では、肉眼でも見える大きな彗星になる可能性があって、太陽に近づくにつれて、ぐんぐん明るくなっていました。

お話が過去形ということは、予想とは違う結果になったのですか?

まだ、太陽から離れていた4月の初めに、彗星の核が分裂してしまいました。彗星が壊れてしまったわけです。
以前にも、そんなのがありました。2013年の「アイソン彗星」。 肉眼でもはっきり見える、大彗星になるはずだったのですが、太陽に最も近づいたとき、蒸発してなくなってしまいました。アトラス彗星も似ていますが、太陽からかなり離れたところで分裂・崩壊してしまいました。すごくもろい状態だったのだと思います。

分裂したアトラス彗星


彗星は、発見した人の名前がつくのですよね?

そうなんですが、これを発見したのは、アトラスさんという人ではなくて、「ATLAS」というプロジェクトの名前です。ハワイで行われているのですが、
「Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System」の頭文字を取ったものです。日本語にすると「小惑星地球衝突最終警報システム」となります。

なんか、怖そうな名前ですね。

実際、ものすごく怖いものを探しています。直径が1km以上ある小惑星は、すでにほとんど発見されていますが、直径100mクラスの小惑星は、地球の近くに来るまで発見できません。そういう地球に近づく、小さな小惑星を探しています。直径100mの小惑星が地球に衝突すると、狭い範囲ですが、甚大な被害が出ます。

どのくらいの範囲で、どの程度の被害ですか?

例えば、直径100m小惑星が、レディオベリーに落ちてきたとしたら...
栃木県庁と宇都宮市役所は、跡形もなく吹き飛びます。そして、宇都宮市全体が廃墟になります。  それで狭い範囲なのか! と思うでしょうが、地球全体から見れば、宇都宮市ひとつぐらいなら・・・ ということです。落ちたところには、深さ数百mのクレーターが出来ます。

「君の名は。」みたいですね。

あれは、衝突したのは彗星です。彗星本体は、雪だるまみたいなものですから、衝突しても破壊力は弱いです。・・・あれでも、なんですけどね。
小惑星は岩石なので、はるかに大きな破壊力があります。そういう危険な小惑星を、早いうちに発見しようというプロジェクトが「ATLAS」です。

ATLASの役割はわかりましたが、その名前が、なんで彗星に付いているのですか?

ATLASは、危険な小惑星を発見するのが目的ですが、ついでに、新しい彗星も発見出来ます。アトラス彗星というのは、アトラスプロジェクトで発見された彗星です。実は、ATLASが発見した彗星はたくさんあります。ですから、アトラス彗星という名前の彗星は、他にもあります。それぞれに違う符号を付けて区別しています。

アトラス彗星は見えなくて残念ですが、アトラスプロジェクトは頑張って、危険な小惑星を早く発見してもらいたいですね。










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