天体望遠鏡の倍率



一般対象の天体観測会に講師として呼ばれることがたまにあります。天体観測会、あるある、です。
雨が降っていても、観測会に来る人がいます。「雨でも、天体望遠鏡で見れば、星が見えるんでしょ。」と言われます。

   そんな人がいるのですか?

普通にいます。でも、雨が降っても来る人の中には、星が見えないときには、講師が星の話をしてくれるので、それを聞きたくて来る人もいます。

   なるほど、両極端ですね。

普通の天体観測会は、曇ったら中止になりますけどね。他によくあるのは、天体望遠鏡で星を見せていると、多くの人が「これは何倍ですか?」と聞いてきます。

   それはありそうですね。

私は倍率が何倍なのかは、全然気にしていないので、「倍率ですか・・・ えーっと・・・」という感じで、答えに詰まります。そうすると、倍率を聞いた人は、「こいつ、倍率さえわからない、素人なのか!」と、軽蔑した目で見てきます。

    天体望遠鏡の倍率って、あまり重要ではないのですか?

倍率が何倍かという数字は、どうでもいいものです。今見ている倍率が、低倍率か、中倍率か、高倍率か、どれなのかがわかっていれば十分です。

    その程度のものなのですね。

天体望遠鏡用接眼レンズ
左から 40mm 24mm 9mm 3-6mmズーム


   そもそも、天体望遠鏡の倍率って、どうやって求めるのですか?

天体望遠鏡は、対物レンズと接眼レンズがあります。

   顕微鏡も同じですね。

顕微鏡の場合は、対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率をかけ算すると、実際の倍率になります。天体望遠鏡は、対物レンズの焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割り算すると倍率になります。

   顕微鏡はかけ算で、天体望遠鏡は割り算なのですね。

例えば、対物レンズの焦点距離が1000mmで、接眼レンズの焦点距離が10mmだった場合、1000÷10で、100倍になります。倍率を上げたいときは、接眼レンズの焦点距離が短いものを使えばいいわけです。最短で、2mmぐらいまであります。

   倍率は高ければ高いほど、よく見えるのですか?

いいえ、全然違います。見る対象によって、適正倍率があります。例えば月を見る場合は、50倍から100倍ぐらいが適正倍率です。その辺りが中倍率です。

   木星や土星などの、惑星を見たい場合はどうでしょう?

その場合は、自分の天体望遠鏡で使える、最高倍率にするのがいいです。最高倍率は、対物レンズの直径で決まります。目安として、対物レンズの直径をmm単位で表したとき、最高倍率は、その2倍です。対物レンズの直径が100mmなら、最高は200倍です。

   でも、計算上は、それより高い倍率にもできますよね。

それをやると、暗くなって、ボケてしまって、かえって見づらくなります。星雲や星団を見たいときは、50倍か、それ以下の低倍率がいいです。

   見る対象によって、低倍率、中倍率、高倍率と、使い分ける必要があるのですね。










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