彗星


   7月も中旬になりました。今週の星のお話は何でしょう?

今日は、彗星の話をします。

   すいせいというと、ほうき星の彗星ですか?

はい、その彗星です。ここしばらく、肉眼でも見える明るい彗星は現れていません。

   しばらくというと、どのくらいの期間ですか?

鹿島田さんは、肉眼でも見える明るい彗星を見たことがありますか?

   2000年頃、肉眼で見える彗星を見たことがあります。

1996年に百武彗星、1997年にヘールボップ彗星というのがやってきて、これらが肉眼で見えました。でも、それが空のどこにあるのか、分かっている人が見ると見えた、という程度です。2007年にはマックノート彗星が現れ、これは多くの人が肉眼で見られました。

   20年以上前ですね。でも、 「君の名は。」に出てきたような、明るい彗星は現れていないのですね。

そういう超明るい彗星は、少なくとも、ここ半世紀以上、現れていません。私も生きている間に、そんな彗星を見たいと思っていますが、なかなか現れません。


「君の名は。」 に出てきた彗星


   双眼鏡で見れば見える程度の彗星なら、時々現れますよね。

今年は、4月に「ポンス・ブルックス彗星」というのが来て、4等星ぐらいの明るさになりました。9月から10月に、「紫金山・アトラス彗星」というのが来ます。それは、肉眼でギリギリ見えるかもしれません。

   「君の名は。」のように見えますか?

残念ながら、肉眼では無理だと思われます。でも双眼鏡で見ると、それに近いくらい見えるかもしれません。

   それまでに、双眼鏡を用意しておきたいですね。

どういう双眼鏡が天体向きなのかは、6月にここでお話ししました。その内容は「ななつがたけ北天文台」のホームページをご覧ください。

   ところで、彗星というのは、突然やって来る天体ですよね。

突然、すごい人が現れると「彗星のように現れた」と表現されますね。彗星は突然やってきます。そして、彗星はオールトの雲から落ちてきます。

   「オールトの雲」・・・ですか?   そして「落ちてくる」のですか・・・

オールトの雲というのは、太陽系の一番外側に漂っている天体です。46億年前に太陽系ができたとき、太陽にも惑星にもなれなかった、太陽系の残骸のようなものが、太陽系の果てに漂っています。どのあたりにあるかというと、太陽から1万天文単位から、10万天文単位ぐらいです。10万天文単位というのは、約1.6 光年になります。

   天文単位というのは、何ですか?

1天文単位というのは、太陽と地球の距離のことで、約1億5千万kmです。1万天文単位というと、太陽と地球の距離の1万倍ということです。ちなみに、太陽と海王星の距離は、30天文単位ぐらいです。

   オールトの雲は、太陽系の天体ではあるけど、太陽から、遙か彼方にあるのですね。

そのあたりには、氷というか、雪だるまみたいなサクサクした感じの、主に固体の水を主成分とする小さな天体が、膨大な数、存在しています。
それらの天体同士がぶつかったり、太陽系の外にある天体の重力を受けたりして、軌道が乱れることがあります。そのとき、太陽の重力に引かれて、太陽の方に落ちて来ることがあります。そういう天体を彗星と呼んでいます。

   彗星は、太陽系の遙か彼方からやって来るのですね。

オールトの雲から太陽に来るまでに、1万年近くかかかります。9月から10月に見える「紫金山・アトラス彗星」は、オールトの雲から落ちてきて、初めて太陽に近づく彗星です。

   そうなのですね。それが明るくなったら、双眼鏡で見てみたいです。










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