FF ノベルコレクション
このお話は実話を基に FF風にアレンジしたものです。
天使のラヴレター(FFZヴァージョン)
「先生、クラウドはどうなのでしょう? 助かるのですか?」
「残念ですが 現在の医学では・・・持っても後3〜4ヶ月です。」
「そんな、・・・なんてこと・・・。」
「エアリスさん、希望を持って下さい。医者の私が言うのも何ですが、この世には奇跡があると
私は信じます。 クラウド君が少しでも この世に生を受けられる為には、あなたの愛が必要なの
です。」
エアリスの一人息子クラウドは7歳になったばかりだった。小学校に
入学してまもなく入院した。
彼の病は「癌」だった。 エアリスに夫はなく、息子の成長だけが生きがいだった。
主治医と相談した結果 エアリスは、せめて残り少ない彼の人生を、家で過ごさせてやりたいと
クラウドを退院させ、自宅に連れ帰る事にした。
はじめは喜んでいたクラウドだったが、1日、1日と経つごとに部屋に閉じこもるようになり、
顔色も悪く、食事も余り摂らなくなっていった。
「クラウド、どうしたの? 元気無いわね。ママに言ってごらん。」
「うん、、何でもないよ、ママ。」
こんな会話が繰り返されたある日、エアリスがおやつを持ってクラウドの部屋に行くと
クラウドはカセットテープを聞いていた。それはクラウドが入院する前日に
クラスメートが
みんなで吹き込んでくれた励ましの声だった。
エアリスには なぜクラウドが ふさぎこんでいたのか理解する事ができた。
「ねー、ママ。クラスのみんなはもうボクのこと
忘れちゃったのかな?」
「そんなことないわ クラウド。みんなも早く元気になって
また遊ぼって言ってるでしょう。」
「うん、そうだよね。」
さびしそうにクラウドが応えた。
そう。クラウドは友達と遊びたい、話したい、ふれあいたいのだ。
エアリスは翌日 学校に出向くと担任の先生に相談した。先生も快く引き受けてくれた。
そしてクラスメートに手紙を書いてもらう事になった。
手紙が来るとクラウドはとたんに元気になった。
「ねーママ、ママ、見て!クラスのみんなが手紙をくれたんだよ。」
「良かったわね。クラウド。」
「うん、ボク嬉しいよ。」
それからというものクラウドは顔色も良く 部屋から出てエアリスとも
良く話すように
なった。 しかし、時がすぎて行くに連れクラウドがまた元気をなくしていった。
エアリスもクラスメートの家を訪ねては 手紙を書いてくれるよう頼んだが、そうそう何度
も引き受けてはもらえない。クラウドもまた、前のように部屋に閉じこもる日が多く、
エアリスも困り果てていた。
そんなある日、町の文房具屋の前で立ち止まったエアリスは
可愛い便箋と封筒を買った。
そして( 遠くの町の君の友達より )、そう封筒に文字をしたためると、便箋にも書き始めた。
『 クラウド君、こんにちは。ぼくは 君の住んでいる町より
ちょっと遠くの町に住んでいる
君と同じ年の男の子です。君は僕の事を知らないだろうけど、僕は君の事を良くしって
いるよ。ずっと前から友達になりたかったんだ。
いいかい?
きっと君なら いいって言ってくれるよね。また、手紙かくよ。
遠くの町の友達より。」
エアリスは翌日 手紙を投函したが、心配だった。
もし、クラウドに手紙を書いたのが
エアリスだと知れたら クラウドは心に深い傷を負うだろう。
そしてそれは 病に冒されているクラウドにとって死を早める結果となるだろう。
しかし、エアリスに残された手だては これしかなかった。
「ね〜、ママ、見て見て。ボクに手紙が来たよ。遠くの町にボクの事
知っててくれる
子がいたんだよ。どんな子かなぁ、どこの町かなぁ、ねー、ママ。ボクと友達になり
たいって書いてあるんだよ。」
「へ〜、ほんと。でも 名前が書いてない所を見ると
きっと恥ずかしがりやさんなのね。」
「うん、そうだね。えへへ。」
成功だ。そう思ったエアリスは それから毎日手紙を書き続けた。
その作業は クラウドが眠りに就いた深夜であったが、手紙が来るたびに喜ぶ
クラウドの笑顔が疲れを 忘れさせた。 二人にとって至福の日々であった。
病魔に虫食まれている事がうそのように クラウドも小さな命をともし続けていた。
退院してから2年が過ぎた日の事だった。買い物から帰ったエアリスが玄関に入ると
階段の下に倒れているクラウドの姿があった。
クラウドはすでに息を引き取っていた。病院では、3ヶ月の命をここまで延命させた
エアリスの愛をたたえたが 最愛の我が子を失ったエアリスには何も聞こえなかった。
失意に底に涙する日々が続いたエアリスも 一ヶ月が経ち涙もかれていた。
呆然とクラウドの部屋の窓から夕日を見ていた。
机の上にノートが乱雑に置かれていた。
エアリスは本とノートをそろえようとしたが、ノートの間になにかはさまっていた。
エアリスがそれを引き抜いてみると、それは(遠い町の友達へ)と書かれていた、クラウドが
書いた手紙だった。 エアリスは封を切って読み始めた。
「遠い町の友達へ
いつも手紙をくれてありがとう。相談や悩みも聞いてくれてありがとう。
学校には 行けなかったけど 君が友達でいてくれたおかげで
毎日がとっても
楽しかったよ。ボクの病気が治ったら、きっと君に会いにいくよ。
君の親友クラウドより」
そして手紙の最後には こう書かれていた。
「 PS: ママ、愛しているよ」
エアリスの枯れていた涙がまたあふれて来た。
「クラウド・・・知っていたのね。」
我が子への精一杯の愛情を注いだエアリスと心やさしいクラウドのこの話は全米中の
知る所となり、同じように病に苦しむ子供たちへ
手紙を書いてあげようと言うボランティア
「天使のラヴレター」が誕生した。
今も、天使のラヴレターは多くの子供たちの心の支えとなって
活動している。