もう一つの魔女伝説

もう一つの「魔女伝説

FF[ヴァージョン・特別出演(エアリス-ゲインズブール)


私の名は「セルフィ・ティルミット」、エスタユニバーシティに通う 女子大生。

パラムガーデンからこっちに来て 勉強ばっかりだから 久しぶりに休みを取って

旅行に出かける事にしたの。 ウィンヒルからデリング〜ドール〜そして故郷の

トラビアと世界一周ね。
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私は支度を整えると ステーションに向かった。 ステーションの隣には大統領が

作った公園がある。 公園は花がたくさん咲いていて、エスタの人々の心を和ま

せてくれている。 この花は、「花売りのエアリス」から ラグナ大統領が少しずつ

買い 植えた物だ。

ターミナルに近づくと その二人がいた。

「おはよう、エアリス。」

「おはようございます、ラグナ大統領。」

「よせって、ラグナでいいよ。照れちゃうだろ。」

「クスッ、わかりました、ラグナさん。」

「よ〜し、いい子だ。今日も花をもらうよ。」

「ありがとうございます。いつものピンクの花ですね?」

「いや、今日はその白い奴をくれるかい。」

「はい、これですね。・・・もしかして誰かにプレゼントですか?」

「う、うん、まァそんなとこかな。ハハ。」

エアリスは知らないみたいだけど、私はすぐにラグナが「白い花」を買った訳が

わかった。 あれは、そう、レインさんに手向ける花だろう。私は二人に挨拶をした。

「おはようございます、ラグナさん、エアリス。」

「やあ、セルフィ、おはよう。」 「おはよう、セルフィ。」

「旅行かい? セルフィ。」

「はい、試験も終わりましたので、たまにはいいかな〜って、ウィンヒルからぐるっと
北回りでトラビアまで。」

「へ〜、じゃあ、途中までいっしょだね。」

思った通り、ラグナはレインさんに逢いに行くらしい。

私たちは エアリスに別れを告げると デリングシティー行きのバスに乗った。

このエアバスは 途中ティンバー〜ウィンヒルを経由しデリングへと向かう。

バスの中は、ほぼ満席だった。

ごく自然に ラグナは 私に たった一つ空いていた席を譲ってくれた。

私は 礼を言うと、 窓の外をぼんやり眺めていた。

ふと 気がつくと ラグナは 7歳くらいの少女と話をしていた。

少女の隣には父親らしき 軍人が眠っていた。

「 お嬢ちゃん、お花すきなの?」

「 うん、リノア お花大好きよ。」

「へ〜、リノアちゃんって言うんだ。いい名前だね。」

「ありがとう、リノア・ハーティリーって言うの。」

「はい、リノアちゃん。」

「え?いいの、ありがとう。」

ラグナは少女に花を手渡した。( でも、それはレインさんに・・・)私は少しムッとした。

( 何も全部あげる事はないでしょう!レインさんはどうすんのよ!)

それに、花をもらったリノアという少女のその笑顔はどことなく寂しそうに感じた。

私がそう思っているうちに バスはウィンヒルに着いてしまった。

ラグナは私と少女に手を振りバスから降りた。私は、訳を話して 少女から少し花を

返してもらおうかと考えていた。 でも、少女を傷つけたくない。

バスは動き出し、降りたラグナを抜き去って行く。( あ〜、どうしよう・・・)

私が 猛烈に悩んでいる その時だった。

「お願い! バスを止めて!お願い!」 少女が叫んでいた。

バスが止まると 少女は駆け下り、ラグナの元へ走っていった。

「 どうしたの? リノアちゃん?」 ラグナは不思議そうにたずねた。

「 このお花を・・・持っていってあげて」 少女は泣いていた。

「リノアちゃん?」ラグナは 優しく少女に微笑んだ。

「あのね、あのね、リノアの体の中にはね魔女がすんでいるの。アデルっていって
とっても恐いの。・・・いろんな人が リノアに優しくしてくれると アデルがでてくるの。
そして リノアに言うの。
( 人間のほんとの心を見せてやるよ)って・・・・・」

私は驚いた、が、ラグナは顔色ひとつ変えずに リノアの話を聴いていた。

「 リノアいやだって言うのにアデルは その人の心の中を見せるの。みんな暗くて、
寒くて、みんな、みんな、心の奥にはオバケさんがいっぱいだったの。
この お花をもらったときも アデルが出てきたの、醜い心を見せてやるって・・・
リノアいやだって言おうとしたらね、アデルが苦しんでるの。
( こんな人間がいるはずない、こんな清んだ心があるはずない)って・・・
そしてね( リノアよ、お前は魔女として覚醒できない、私も消え去るだろう)って
言ったの。そしたらリノアの心の中からアデルがいなくなったの。」

少女は 大粒の涙をポロポロ流していた。

「リノアね、アデルがいなくなったら、あなたの心の中が見えたの。
このお花を あなたが誰に渡したかったか わかったの。だから、だから
・・・このお花・・・」

ラグナはしゃがみこむと、さらに優しく微笑んで少女の頭に手をそえた。

その時だった。私は自分の目を疑った。

少女の背中から 青みがかった白い透明な 翼が羽を広げていたのだ。

私には 何がおきているのか理解できなかった。

しかし、ラグナは少女から 花を受け取ると 優しく微笑んで言った。

「ありがとう、天使さん。」 と。

そうか、そうだったのか。私が我に返ると バスは走り出していた。

ラグナは 遠くに歩いているのが見えたが、少女の姿は消えていた。

座席を見ると 父親らしい軍人の姿も無い。しかし、私にはどうでも良い事だった。


ラグナ、いや、ラグナ・レウァール大統領。すばらしい人だ。

私は、急遽 旅行を取りやめ エスタに戻る事にした。

もっと、勉強して 大統領執務官の試験を受けるために。

・・・・
後編へつづく・・・・・・



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