立枯れの惨劇を見て、わたしは何だかとても空しくなってし
まった。来年もまたあの場所で、ジャコウの匂いを放ちなが
ら立枯れを歩く大きなハナムグリの姿を見ることは出来るだ
ろうか。無事を願わずには居られない・・。

さて、折角ここまで来たのだから、ヒメオオの姿も見て置か
なければ帰れまい。(^^;; 気を持ち直してヒメな目線に替え
る。しかし私にはサッパリ見付けることが出来ない。(^^;;
そんな中、要約悪友Mが♂を見付けた。
一度見付ると皆ヒメオオな目線が出来て、ぼちぼち追加がでるようになった。それでも結局は2♂2♀程
度の採集に留まった。落とした個体を入れても6exsとこの地に置いては情けない結果となった。
他の採集者の方からの話では、これでも良い方だったらしい。(^^;; 9月半ばにして、ヒメはもう終盤にな
ってしまったようである。本当に今年の天候には振り回されている。
その後、なおもコブの追加をしようと落ち葉を叩いていると、
コブとはちがうカミキリが落ちてきた。
ニセビロウドカミキリ(Acalolepta degener Bates)と思われる
。図鑑によれば6〜8月頃出現とある。やや遅い発生の個
体なのだろうか。ちなにみわたし的に初採集。(^^
この他のカミキリとしては、ヒメヒゲナガカミキリをヤナギの
伐採木より採集することができた。
それにしてもこの季節の山は寂しい・・。4〜6月に掛けての
、弾けんばかりの虫たちや木々の賑わいは面影もなく、ひっ
そりと沈黙を保っているように見える。昆虫の姿が見えない
森は、こんなにも寂しいものなのか・・。
やがて森は紅葉に色付く頃を迎え、そしてしんしんと降る雪
はブナたちを孤独にして行くことだろう。
来年の春が来るまでは、ブナの森で昆虫たちは静かにその
ときを待つのである。できうることであれば、そんなブナや昆
虫たちをそっとして置いてあげたいものである。
私もこれからのシーズンは、ルリ属の採集において材採集
をすることになるのだが、出来る限り他の昆虫たちに影響を
及ぼさないように、配慮した材採集を心掛けようと思う。
むやみに立枯れに斧をふるい、いたずらに昆虫たちを苦し
めるような採集は止めよう。ブナたちはそんな私達の振舞い
をきっと見ている。立枯れと言えど、決して死んでいる訳で
はないのだ。
そこでは、また新たな命が確実にその鎖を繋いでいるのだ。私たちは森から沢山の恩恵を受けている。
水・空気・土。これらは皆森とそこに住む生き物たちが作り出している恵なのである。山が嫌いな人も
昆虫採集が好きでない人も、皆一様にその恵は得ているのだ。
だから我々はブナの森が破壊され様とした時、声を大にして反対したのだ。私達がブナの森に還せる
ものは何もないかも知れない。だが、その森の大切さや儚さを人に伝えることはできるだろう。
そして昆虫採集を通して、感じた森の声を代弁できるようになれた好いなと思う私なのであった。(^^

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