ラベル式展足法のススメ



小型甲虫編  小型の昆虫,特に甲虫の展足は容易ではない.針を用いた展足が出来
ればそれに越したことはないのだが,対象が小さければ小さいほど困難な
作業となる.仕舞いには,ろくすっぽ展脚もせずにマウントしてしまい,標
本になる虫に対して,大変申し訳ない状態になることが多い.(私の場合)
 簡易的な展足法としては脱脂綿を用いた遣り方が主流だが,脱脂綿で
展足できる虫の大きさには限界がある.それに,脱脂綿の上で展足はした
ものの,いざマウントと言う段階で綿にふ節が引っ掛かり,標本を破損して
しまったり,標本が綿屑だらけになってしまったり,下唇が綿とくっ付いてし
まったりと,案外勝手が悪いのが脱脂綿である.
 針を用いた展足に比べて,脱脂綿は容易に展足ができる.尚且つ油抜き
から収納も容易なのであるが,前述の理由と小さな対象の不具合はどうし
ても否めない.対象の大小に関わらず,ふ節を整え様と動かした際に,糸
クズが絡まり体ごと動いてしまうこともよくある.
 脱脂綿の長所を残し,尚且つ短所を克服する展足法はないだろうか・・.
そうして考え出したのが,このラベル式展足法である.以下,簡略にこの
展足法について説明していこう.

■ 道具

 今回はMDケースをタトウとして使用する.100円ショップなどで4個1パック程度で売られている.脱脂綿の代わりは『ラベル』である.こちらも100円ショップでもいろいろなサイズが売られている. そのほかの道具類は,一般的に利用するものでよい.

■ 展足

 まず,MOケースの蓋になる部分に大きめのラベルを粘着面を上にして
貼り付ける.貼り付けには,小さめのラベルを使う.
 貼り付けに使った小さなラベルに,データを鉛筆で書き込む.ボール
ペンなどで書くと,油抜きの際にインクが溶け出してしまうから鉛筆で
記入する.
 今回はツルツルとよく滑り,展足しづらいコルリクワガタをモデルとして
みる.
 
 はじめに虫を裏返して置く.
 この状態で足を伸ばしたり,顎を開いたりして,大方の形を整えておく.
脱脂綿だと,これが出来ない.虫がツルツルと滑って,足が上手く伸ばせないのだ.ラベルを使うと,接着面が上手く虫体を押えて,整え易くなるのだ.
 こんな感じに出来上がったら,おもてに返す.おもてに返したら,ふ節・触覚を整えていく.
 同じ作業を繰り返して,虫を並べて行く.触覚やふ節はこの時点で微調整する.この時も接着面が上手くふ節を押えてくれ,脱脂綿の展脚以上に美しく展足ができる.
 

 ”標本を剥がす際に,接着面で標本を傷めてしまうのではないか.”


 心配御無用.ラベルの接着面は然程強くないので,容易に剥がすことが出来る.また,触覚などがくっ付いてしまう心配もない.
 最後に蓋を閉めて出来上がり.立てても標本が落ちることはない.乾燥する際も,これで標本を食い荒らすムシからガードできる.紙のタトウと違って,重ねて保管しても,標本を押しつぶしたりすることもなく,中身も一目瞭然なので,管理し易いのも長所である.
 この方法を用いれば,メダカカミキリの様に小さくかぼそい甲虫も容易に美しく展足できるのである.ただし,針先が見えればの話である.
参考HP:つーさんの森(くわ馬鹿必須アイテム「MOメディアケース」)

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