MA-1  MIL-J-82790F  (DLA100-80-C-3339   14 JULY 1980)

実物

 

 

手持ちの中で、最も気に入っているモデルです
この一着を手に入れたおかげで、他の8279Fモデルや古い民間品にも手を出すハメになったという
いわくつきの一着です
外見の特徴・仕様は8279Eモデルそのものですが、芯綿はポリエステルになります
また、MIL-SPEC番号がMIL-J-82790Fという実在しない番号になっています
そう申し上げると、「なんだそりゃ、只の民間品だろ」と突っ込まれるのは当然で
私も見かけた当初は、只の民間品だと思っておりました

しかしながらなぜか気になって仕方が無かったので、ラベルを注意深く見てみると
これは明らかに民間品ではありません
きちんと契約番号が入っており、ストック番号も他のMA-1(SMALL)と一致します
品名にも「FLYER‘S」が入っておらず、正しく8279Fの品名となっています

「これは...一体何?」
そして気づいた時には、購入フォームの送信ボタンを押していたのでした...(ヲイ

それなりに使用感は有り、襟リブに大きめの穴も有りましたが(リペアしました)
それ以外は大変程度が良くシェルに傷や破れは全くありません
リブのテンションも素晴らしく残っており、着用回数は非常に少ない物と思われます

芯綿がポリエステルの為、大変軽く且つ柔らかく仕上がっていますが
民間品とは比較にならない程の厚みが有りますので、保温性は高いです
芯綿以外の素材は8279Eとそっくり同一と思われ、大変しっかりとした造りになっています
民間品をこのクオリティで造ってくれていればなあ...

8279Fであるにも関わらず、ライニングがオレンジで、尚且つ内ポケットも付いています


ファスナーは後期型のSCOVILLです
周囲の縫製を見ると、ピッチの狭いMIL−SPEC仕様である事が分ると思います
このアルミファスナーは、翌年の1981年度契約の8279Fまで使用され
1982年度契約以降は真鍮製のファスナーが復活しています

 


ちょっとピンボケで申し訳ありません
ポケットのファスナーは、おなじみのGRIPPERです

 

以上の特徴から推察すると
1978年度発注を最後にMIL-J-8279Eは終了し、MIL-J-8279Fへ移行したという事になっていますが
DPSC(
Defense Personnel Support Center)による1979年製MIL-J-8279Eというモノが存在しています
私が存在を確認しているのはライニングがオレンジのタイプですが、どうやらグレーの物も存在するらしいのです
そして、グレーライニング&ポリエステル綿&内ポケット無しという
いわゆる8279Fらしい仕様のMA-1が、実際に登場するのは1981年度契約分からです
つまりこの1979〜1980年の間に、MIL-J−8279Fは幾度かの修正を経て策定され
その過程でDPSC製やここで紹介している82790Fなどの「過渡期モデル」が発生したものと思われます
8279FのMIL-SPECシートを、初期から全て見る事が出来れば、ある程度謎は解消されると思うのですがねぇ...

 追記
「飛行服発達史」(
WORLD PHOTO PRESS Co.誌において
1978年11月6日発行のMIL-SPEC MIL‐J‐8279Fの内容について触れている部分が有るのですが、
当初のMIL‐J‐8279Fは オレンジライニング/芯綿はウールパイル/ポケットは内外2個ずつ
という指定内容であったという記述が有るのですよね...(今更気が付いたのですが)
これでは8279Eと全く同じ仕様となり、当初の8279Fとは何を変更するSPEC改定だったのか???な訳です
しかし8279Fがこの8279E仕様?からスタートして、汎用防寒ジャケットとしての不要な仕様を削ぎ落としながら
(もしかすると、強烈なコストダウンの要求に応える必要が有ったのかも...)
最終的に グレーライニング/芯綿ポリエステル/内ポケット無しに至ったのであろうという推測は
それほど当て外れな物ではないのだろうと思います

 

 

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