現代人の法話 
〜 日本人よ、誇りを持て 〜

 明治大学教授の斉藤孝さんは月刊誌『文芸春秋』7月号で、「日本人・上機嫌化プロジェクト』と題して、日本人の持つ6つの特質を掲げています。すなわち、(1)労働を楽しむ、(2)子供っぽさを持つ、(3)変わり身の早さ、(4)身体で学ぶ、(5)周囲への心配り、(6)はかなさを愛でる、です。普段、私たちは「灯台元暗し」で、こうしたことに気づいていませんが、わが国が今まで発展して来たのは、以上のような特質に裏打ちされているようです。
 ここ十数年来、バブルがはじけて景気は停滞し、諸外国から政治的、経済的なバッシングを受けて、とかく私たちは意気消沈しがちですが、国家に日頃無関心な若者までが、サッカー・アジア予選で日本が勝って雄叫びを上げ、一致団結したように、いざとなると日頃潜在していた底力を発揮するのです。国内にいると案外気づいていないのは、日本製品の優秀さで、たとえば自動車、電化製品、アニメ、漫画、料理、インテリア・デザイン、建築、造園などの品質、管理などは他国の追従を許さないものです。また、いくら道徳心の失墜や凶悪犯罪の多発が喧伝されているとはいえ、運輸・通信機関の迅速、確実さや、駅ホームの順番待ちなどの秩序が保たれていることなど、垂涎の的となっているものがゴマンとあります。
 こうした一端緩急の折りに日本人が一致協力して事に当たる心情は、一朝一夕にして生まれたものではなく、「精進(仕事と趣味の一致)、禅定(自分の愚かさを自覚)、智慧(とらわれない)、持戒(心身一如)、布施(慈悲心)、忍辱(無常を悟る)」を基軸とした、仏教的な「空」の精神のしからしむるところである、と言っても過言ではないでしょう。



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