現代人の法話 
〜 「バランスをとる」 〜

 先日TVを見ていたらお盆の時期という事もありお墓参りの変化≠ノついてのニュースを何度か目にしました。主に取り上げられていたのは造花(ぞうか)=A暑過ぎる夏に枯れない造花が注目されているとの事、TV内でも色々な意見がありましたが、住職としてはやはり生花をお供えして欲しいと考えます。
 確かに造花は色あせず、枯れて周囲を汚さない等の利点もあり理解できますし、寺でも時期によりやむなく使いますが、それはあくまでも仮(かり)、イミテーションであって、お盆やお彼岸、お命日のお参りには大いなる自然が育(はぐく)んだ本物の生花が相応(ふさわ)しいと考えるからです。
 さて現代の合理主義、効率主義を象徴する言葉にコスパ(コストパフォーマンス)とタイパ(タイムパフォーマンス)があります。コスパは費用対効果と訳され、費(つい)やした費用に対しての効果や満足度を表し、会社等の経済活動、家計においてもコスパのさが追求されます。タイパも同様に、時間対効果と訳され、短い時間でより多くの成果や満足感を得ようとする志向で、会社等の経済活動のみならず、個人でも映画や動画を倍速で見たり、冷凍食品・ミールキットの活用などが有るようです。
 お墓への造花もその一種なのかもしれませんが、私が注目したいのはコスパ、タイパによって得たものを如何(いか)に有効に使うかです。コスパ、タイパを追求し過ぎると目先の損得しか考えない狭い心に陥(おちい)りがちです。だからこそそれらを離れた世界〜素晴らしい自然、体験、芸術、文化そして仏教体験、お墓参り等を通じ、心の豊かさを育み、お釈迦様の説かれた中道=`極端を離れた心のバランスをとって頂きたいと思います。



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