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2010-10-24 お別れ前夜



葬儀の手配が順調にすすんでいる。明日以降葬式がはじまる。
私にとっては全てが終わってしまったことだが、
シンと静まりかえる祖母の寝顔を見ていると、いたたまれなくなる。
今日までいろいろな人が線香をあげにきてくれた。

祖母の友達、兄弟、子供、孫、私の知る限りではこれほど他人に愛された人は知らない。
なににたいしても前向きで、たいていの出来事をへんと笑えることに変えれる人だった。
私にとって祖母はかけがえのない人だった。育ててくれた親であり、人のあたたかさを教えてくれた最初の人だった。
祖母は強かったが、一度だけ祖母が泣いていたことを私はしっている。
私が中学生の頃、反抗期だった私は祖母にひどいことをいった。
なぜそんなことをしたのか。

祖母が私のなかで一番近い場所にいてくれた人だったからだ。
祖母はひどく傷つき陰で泣いていた。私はそれを偶然見たとき、ひどく後悔した。

おばこうこうと言うほどのことはまだなにもしてやれなかった。
私が馬鹿だった。もっと社会というものと利口に生きるべきだった。
私には変にプライドがあるところがある。それを自覚してなを、性格を変えることができなかった。転々とする職場で、人ととけこむことができなかった。だからこそ、意に反して気付けば職場を転々とすることになっていた。行き場をなくした私は職業能力開発校に通うことになった。きっかけはたまたまコンビニでみつけたタウンワーク誌の裏に書いてあった記事だった。なにもかもがなりゆきまかせで、なにもかもがいい加減だった。そして、自分だけで手一杯で祖母を気にかけることを忘れていた。
いつか、そして恩返しをするべきだった。

亡くなってから私はそう思う。

一緒にいた時間が長かったのに、私は祖母になにもしてやれなかった。
後悔あとにたたずとはよくいったものだ。
私は祖母を思い出すたびそう思うだろう。


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