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act.4: 【HSP】



 Highly Sensitive Person。とても敏感な人。
 ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。には、こんなことが書かれてあった。

・心の傷を癒すこと
 極端に困難な子供時代や思春期を過ごしていたHSPは、その過去を受け止め、自分の特徴を理解し、傷を癒すという「仕事」を怠ると不安感や鬱状態に悩まされ自殺に至る危険性が高くなる。

・困難な過去
 一見人生の目的を妨げられているように見えるが、実際のところは目的達成に一役買っていることもある。また、その「困難な過去」を充分に経験し、人間の問題として理解することが人生の目的となっていることさえある。

・大切なのは
 自分が必要なことはしていい、という許可を自分に与えること。自分の敏感さを理解し、尊重すること。落ち着きを仕事場で持つように努力すること。そして、内面と外面があまりにもかけ離れないようにすること。広い視野を持ち複雑さに耐え、他人に理解を示せるようにすること。


 私の内面には常に物足りない欲望。ブラックホールのような不安定な闇がある。生きるためのたったひとつの理由さえ考えられなくなることもある。生きていても死んでいるのと変わらない虚しさがある。カウンセリングを終えて帰る電車のなかで私は考えていた。パニック症候群、脅迫症候群といったものは、脳内物質の一種であるGABAの機能を促進する薬が有効である。主に、ベンゾジアゼピン類と呼ばれるハルシオンなどのトランキライザーが有効である。また、アルコールも脳内でGABAの作用を強める。完治に至るにはこのような薬物療法、および行動療法と病気の理解が必要不可欠である。

 私はつり革につかまり寄りかかりながら山手線の窓の外をながめた。平日の日が傾く頃、乗客もそれなりに混む時間帯だ。私はこのなかで何人が自分と同じなやみを抱えているのか考えてみた。カウンセリングは単調な時間でしかない。答えなど出ない。なぜなら、カウンセリングとは他人を通し自分のなかにある心の声を整理整頓することにあるからだ。そこに他人の意志の介入はできない。他人の意志の介入があった時点でそれはカウンセリングではなく洗脳行為になってしまうからだ。答えは常に自分のなかに存在する。その考えこそがカウンセリングの根底にある。


 カウンセリングが行動療法の一種だとしたら、あとは病気の理解だ。そもそも脳内の神経細胞と神経細胞の間は電気信号ではなく、化学反応によって信号が伝わる。病気になる人間はこの伝わりかたが不規則になり引き起こされるとされている。そして、そのつながりは実は意識して鍛えることができる。それによって、伝達物質が多くなり受容体の反応が改善される。そればかりか、活動している近くにバイパスのように新しいシナプスが形成され活動を補強することが可能となる。そして、これは意識に関係する。海馬で起こり長期増強などといわれる反復学習が記憶を定着させるのはこのためだ。この作用が働くのは、記憶だけではなく、よく自信がつくと別人のように精力的になったり見た目さえも様変わりすることがある。これも脳のシナプスが鍛えられたため。この場合、自信といっても、何かを判断するときに疑いの疑念が浮かぶことなく、判断通りに決断し行動できることを指すらしい。決定を制御する前頭葉の機能に、決定にたいし不安を考える帯状回。物事がうまく運びはじめると決定に対してこうした制御がきかなくなる。また、常々感じる不安さえ浮かばなくなる。GABAという不安を制御する神経は、不安になると働かなくなる。不安が強いときに服用する鎮静剤のハルシオンなどは、このGABA神経の作用を高める作用をし、帯状回の興奮を抑える。自信をもつことで脳は鍛えられる。

act.5: 【thanatology】


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