パンスターズ彗星(2011L4)


パンスターズ彗星という大きな彗星が太陽に近づきました。夕方、西の空の低いところに見えています。見えていますといっても、肉眼では見えません。双眼鏡があると見つけられます。口径8cm前後のスポッティングスコープで見るとよく見えます。野鳥を見てる人、持ってますよね。この場合、最低倍率で見てください。もちろん、もっと大きな天体望遠鏡でも見られます。でも、倍率が上がれば上がるほど、見える範囲が狭くなるので、視野に入れるのがたいへんになります。

ところで、まだ空が青空で星が全く見えないとき、どうやって彗星の位置を特定してますか?
あらかじめ、彗星がどの星座の中のどのあたりにいるかを調べた上で、iPhone、iPadに「Star Walk」、「Sky Safari3」、「iステラ」等のアプリを入れて空に向けてかざせば、彗星の位置がわかります。月や目立つ明るい星が近くにあれば、その位置と画面を合わせると誤差が解消します。

空気が澄んだ夜空の暗いところで、7倍前後の双眼鏡で見るとこんな感じ
まだ薄明の残った明るいうちにしか見えません


そのそも、彗星とはどんな天体なのでしょう。
3月3日のところに書いてありますので、そちらを参照してください。
太陽系の果てに、太陽を取り囲むように小さな天体がたくさん集まっているらしいのです。これを「オールトの雲」と呼んでいます。その小さな天体というのは、大部分が雪のようなサクサクした氷でできています。その中に、遠い昔、太陽系ができた頃、太陽系の星になれなかったチリから小石ぐらいの大きさの粒が混じっています。我々が目にするもので一番近いのが「汚れた雪だるま」です。地面の土や砂をいっぱい巻き込んで茶色く汚れた雪だるま。

その汚れた雪だるまが、何かの拍子に太陽に向かって落ちてくることがあります。太陽にぶつかりそうになる(実際ぶつかるものもある)のですが、太陽のすぐそばをかすめて、太陽の周りを半周ぐらいぐるっと回って、また太陽系の果てに帰って行きます。
ですから、原則、1個の彗星は1回しか見られません。

オールトの雲にある彗星の元になる天体にも、大きいもの小さいものがあります。今回のパンスターズ彗星は特大級だったのです。元が大きいから明るく見えるだろうという期待がありました。肉眼でも楽々見える明るさになるという予想もありました。でも、彗星と地球の位置関係が悪かった。
彗星はあくまでも太陽に向かって飛んでくるのであって、地球に向かってくるわけではありません。彗星が太陽の近くに来たとき、地球がどこにいるかが問題です。彗星と地球の距離が遠いと、いくら大きな彗星でも小さくしか見えません。今回はかなり遠かったのです。遠いのは最初からわかっていたのですが、元が大きかったので大きな期待をしてしまったのでしょう。

それでも、彗星としてはめったに来ない大きくて明るいものです。大部分の彗星はすごく小さくて暗いのです。パンスターズ彗星を300mm望遠レンズで撮影するとこんな感じです。たった2.5秒の露出でこれだけ写るのはすごいことです。
2013.03.15 18:53 撮影  EOS60Da 300mmF2.8 ISO800 露出2.5秒

実は、「パンスターズ彗星」という名前の彗星はたくさんあります。
主にアメリカを中心に行われている「パンスターズ計画」というものがあります。4台の大型望遠鏡で継続的に全天を観測し、移動する天体や突発的に現れる天体を発見するプロジェクトです。先日、ロシアに隕石が落下して大きな被害が出ましたね。残念ながらロシアの隕石は、パンスタース計画で発見できる限界より小さかったので事前に発見できませんでした。パンスターズ計画は、そういう地球に衝突する天体を発見することも目的です。パンスターズ計画によって発見された彗星は全部パンスターズ彗星です。ですから、どのパンスターズ彗星なのかをはっきりさせないといけません。「2011L4」というのが、今回話題のパンスターズ彗星です。







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