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国際化=英語ではない

2001.6.26

 TBSラジオ『松尾雄治のピテカンワイド』で松尾さんがこんな発言をした。

「車のナンバープレートはダサイ。“ふ”とか“さ”とかダサイ。今は国際化なのだからアルファベットとかにしないとだめだ。事件や事故で子どもが見ても、『“口”三つに線が3本』(註:品川のこと)なんて解らないよ。」

 少々反論をしたいが、ダサイかそうでないかは主観が絡むので問題にしない。

 アルファベットとは英語のアルファベット=abcを指しているのであろうが、国際化=英語というのが間違っている。

「アルファベット」のトリビア:
語源的には、ギリシャ語で使う文字の最初がαβ(アルファ・ベータ)だったことからきたらしく、英語の文字(abc…)だけを指すものではありません。キリル文字(ロシア語)のабв…だって、ギリシャ文字のαβγ…だって、ハングル文字(韓国語)だってアルファベットです。考え方によってはイロハだってアルファベットですよ。

 法務省がまとめた統計資料「平成11年末現在における外国人登録者統計について」によると、一番多い外国人登録者はアジア系(74.6%)だ。2番目は南米系(17.9%)で、英語を話すであろう北米出身者は3.5%で3番目。イギリスも含めたヨーロッパ出身者が2.7%で続く。(付け加えるまでもなく、カナダは思ったよりフランス語だし、ヨーロッパのうち英語はイギリスだけだ。)
「在日朝鮮・韓国人が含まれるからこれは当たり前だよ」という方には、やはり法務省の「外国人の入国状況」という資料をご紹介しよう。1位は韓国(24.4%)、2位が台湾(17.9%)、3位アメリカ(14.2%)、以下、中国・イギリス・香港・フィリピンと続く。

 つまり、国際化ゆえに日本の車のナンバープレートに外国語を使わなければならないのならば、韓国語(ハングル文字)か台湾語(繁体漢字)か中国語(簡体漢字)あたりにしたほうがいい。そう、「ナンバープレートにアルファベット=英字を使う」という発想は「日本で外国語を優先させる」という発想に他ならない。こういう発想を形容するに当たり、一番過激な言葉を使うと“売国奴的発想”である(慌てて付け加えておくが、松尾氏=売国奴とは言っていないし思ってもいない)。

 子どもの話にしても、ちょっと眉唾だ。ナンバープレートの漢字が読めない子はabcも難しいんじゃないかな。そりゃ、“袖ケ浦”は読めないかも知れないが、地元の子なら「パパの車と同じだった」という言い方はできるだろう。どうしてもと言うのなら、“なにわ”や“とちぎ”みたいに全部ひらがなにしてしまったらどうだろう。

 結局、日本の車のナンバープレートは日本語であるべきだと思う。どうやら松尾さんは「郷に入っては郷に従え」という諺を知らないらしい。人種のモザイク(以前は坩堝るつぼ)と言われるアメリカで、ハングルやカナが使われるようになったら僕も考え直してもいいけどさ。