2001.6.12
五つ星が満点。
本多勝一 『アイヌ民族』 (本多勝一集26/朝日新聞社ISBN4-02-256776-7) |
お薦め度 |
★★★ |
あらまし |
アイヌ民族の歴史について書いた第一部「アイヌ民族」。世界の先住民族についての報告である第二部「先住民族に学ぶ」。イニュイ民族(いわゆるエスキモー)の民話を英訳からさらに邦訳した第三部「イニュイの民話」からなる。 |
コメント |
僕にはぜひ生で聴いてみたい音(声)が3つあって、ひとつはコーランの朗誦、二つ目がバリ島のケチャ。そして三つ目がユーカラなのだ。本書とはほとんど関係のないコメントでした。 |
本多勝一 『アムンセンとスコット』 (本多勝一集28/朝日新聞社ISBN4-02-256778-3) |
お薦め度 |
★★★★ |
あらまし |
南極点初到達を争ったアムンセンとスコット。結果はアムンセン隊が先着し、スコット隊は34日遅れた上に、帰途、遭難・全滅する。その2隊を同時進行形式で追ったドキュメント。後篇――著者と北村泰一氏(九大理学部教授・第一次および第三次南極越冬隊員)との対話部分は未読。 |
コメント |
アムンセンが勝者でスコットが敗者であると即断するのは危うい。スコットは、死を覚悟して妻に宛てて書いた手紙の結び近くで「家にいて安楽すぎる暮しを送るより、はるかにましだった」と書いた。冒険家の心意気を感じた。不覚にも涙。 |
野瀬泰申 『食品サンプル観察学序説』 (三五館ISBN4-88320-221-6) |
お薦め度 |
ゼロ |
あらまし |
(略) |
コメント |
目の付け所は良いと思うのだが、不真面目なところが致命傷。面白いでしょ可笑しいでしょと自ら笑っている文章が面白くも可笑しくもない。例えば《ケンタイキフライドチキン》というお品書きがなぜそうなってしまったのかは《(書いた)本人に直接聞いてみるしか解決の方法はないようだ》としたあとで店の主人との会話が書かれる。しかしこれは著者の想像の産物なのだ。そんな妄想は要らない。真面目にやれ。これが日経の編集委員だというのだから恐れ入る。 |
本多勝一 『ソビエト最後の日々』 (本多勝一集30/ISBN4-02-256780-5) |
お薦め度 |
★★ |
あらまし |
1991年4月末からの約1ヵ月間、著者が崩壊直前のソビエト社会主義共和国連邦(当時)を旅したルポ。朝日新聞在職中最後の連載記事。 |
コメント |
《取材しない取材》を旨として積極的な取材はしていないため、ルポというよりも旅行記に近い。 |
谷口源太郎 『スポーツの真実』 (三一書房ISBN4-380-96277-6) |
お薦め度 |
★★★ |
あらまし |
東京新聞の連載をまとめた第一部と、日経ビジネスなどに書いた第二部からなる。第一部が四分ノ三を占める。辛口である。 |
コメント |
選手はほとんど取り上げられず、周囲(主に“協会”と呼ばれる組織)に矛先が向けられる。ただし、一回分が原稿用紙3枚半くらいなので批判だけで終わってしまい「建設的意見」が出てこないのが残念。 |
本多氏の表記法は一種独特なところがあって、BA BI BU BE BOはバビブベボと書くけれどもVA VI VU VE VOはワ行に濁点を打ってワ゛ヰ゛ウ゛ヱ゛ヲ゛、WI WE WOはヰヱヲと表記するのだ。だから、アムンセン隊の一人Wistingはヰ゛スチングだし、ソ連(当時)を一緒に旅した友人САВИЛОВ ВИТАЛИЙはサヰ゛ロフ=ヰ゛タリーだし、Norwayはノルヱーである。他にもいろいろあるが、割愛する。興味がある人は氏の本を手にとって《凡例》を見ていただきたい(新しい本のほうがbetter)。内容的にもお薦めなのは『日本語の作文技術』(朝日文庫)だ(『実戦・日本語の作文技術』(同)もあるので注意)。