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『猿の惑星』を観てきた

2001.9.15

 ティム=バートン監督の最新作『猿の惑星(原題:Planet of the Apes)』を観てきた。

 宇宙飛行士レオが猿の惑星に不時着する場所は森の中の池だ(これがまたホントーに小さい)。宇宙船内に浸水してくるので緊急脱出するが、慌てて宇宙服のヘルメットを脱ぐ。このシーンを見たときに、「あー、この映画はSFというわけではないんだな」と思った。SF映画の常識として、未知の惑星に着いても直ぐにヘルメットを取ってはいけないのだ。それは大気などの環境を分析してからのこと。分かり易いように「浸水」と書いたけれども、これが塩酸だったら(宇宙服の耐久性にもよるけれど)一発でアウトだ。

 いろいろあるが、ネタバレになるので隠しておく。ドラッグすると見れるので見たい人だけどうぞ。

  1. 強さの象徴である銃を御神体にするのは頷けるが、それがなぜ、猿の神セモス様が人間に支配されていた証拠になるのだろう?
  2. 不時着した母船オベロン号で飼われていた“DNA操作猿”が反乱を起こし、乗組員を殺してから栄えたのが猿の惑星のはず。では、猿の惑星で支配されている人間種の起源は一体どこに?
  3. オベロン号で飼われていた猿はチンパンジーだけだったような気がするが(少なくとも大型猿はいなかった)、猿の惑星にはゴリラもオラウータンもいる。進化の速度が速いのだろうか?
  4. レオ君もアリちゃんも敵陣を突破するときに落馬して馬を失っているはずなのに、一晩経つとあら不思議、全員馬に乗っている。
  5. レオ君たちが必死の思いをして辿り着いた聖地カリマではあるが、その後あまり時を経ずして多くの人間が噂を聞いてやってくる。彼らは別に猿軍団を蹴散らしてやってきたわけでもないらしい。なんだよ。あんなに苦労しなくてもいいんじゃんかよ。
  6. 永久核動力源で動いているオベロン号にも燃料による噴射装置がある(これも少し引っかかる所ではある)が、三つある燃料タンクのうちのひとつに四分ノ三ほど(ということは全体の四分ノ一ほど)残っていた燃料が一回の噴射で全部使われてしまうというのは、設計ミス(燃料タンク小さ過ぎ)ではないだろうか?
  7. この一噴きのあと生き残る猿が多すぎる。あいつらは不死身か?
  8. さあレオ君とセード将軍の決闘の結末や如何に、というところで小型宇宙船に乗ったセモス様ことペリクリーズ君(チンパンジー)が現れるのはご都合主義としか言いようがないが、こいつは着陸がめちゃくちゃ上手い。レオ君はペリクリーズ君に習ったほうがいいぞ。後でレオ君は地球に向かうのだが、ここでもまた(おまえ助かってよかったなぁというような)不時着だ。あれでは命がいくつあっても足りないぞ、レオ君。
  9. セード将軍の忠実な部下アターが、最終的に将軍を見限る理由が理解できなかった。誰か説明してくれ。猿の神セモス様が人間を殺した過去があることとセード将軍を信頼できないことにどういった関係だあるんだ?
  10. 磁気嵐を抜けて土星付近から地球を目指すレオ君。アッと言う間に到着だ。「喉が渇いたなあ」とか「腹減ったなあ」とかいう間もない。1977年8月20日に打ち上げられたボイジャー2号が土星に最接近したのは、4年後、1981年8月27日である。

 ま、物語は破綻しているが見所がないわけでもなくて、特殊メイクと猿役俳優たちの演技(特に食事会のシーン)は見モノだ。もっとも、これだけでは特殊メイク専門学校の卒業制作みたいなものだ。

 ティム=バートン監督は、1968年制作のオリジナル版に対して「再映画化<リメイク>ではなくて再創造<リ=イマジネーション>だ」と言ったそうだが、今回の結末はピエール=ブールの原作通りなのだ。どんでん返しを狙って360度回してしまったか? ん? まさか原作を読まなかったわけではあるまいな。

 猿関係の仕事に対して面白度★★、みんなでおしゃべりするネタになるからお薦め度★★★★である(いや、別に感動してもいいけどさ^_^;)。

 思うに脚本家が3人もいるせいで、整合性が取れなくなっているんじゃなかな? というわけで最後にことわざをひとつ――

船頭多くして船山に上る