←前回 次回→ ?今月の目次 ジャンル別一覧  ご意見ご感想はこちらから

三行書評 第31回

2001.12.31

 五つ星が満点。

F.D.ピート
『超ひも理論入門 上』
(久志本克己/宮崎忠監修/講談社ブルーバックスISBN4-06-132831-X)
お薦め度
あらまし 世界は長さ10-35mの超ひもでできている。始まりは10次元だったが、6次元が「巻き取られ」て現在の4次元宇宙(3次元空間+時間)が誕生した。どうやらこういうことを言っているらしい。
コメント 文法的におかしくて理解できない文章はまま見受けられるが、「文法的には正しいのだが理解できない文章」というのを久しぶりに読んだ。だから、上記あらましについては“理解した”というよりも“感じ取った”と言ったほうが正確。下巻は断念。
サイモン=クーパー
『サッカーの敵』
(柳下毅一郎/白水社ISBN4-560-04960-2)
お薦め度 ★★★
あらまし クラブチームを私物化する権力者やナショナルチームを私物化する独裁者・利権をむさぼる黒幕などを紹介している。
コメント 悪口ばかり書いても仕方ないのだが、どうも日本語が変で読むのが大変だった。接続詞や指示代名詞が極端に少ないのだ。箇条書きの羅列を読んでいるようで疲れた。そもそも、“Football Against the Enemy”という原題を『サッカーの敵』と訳すのは、誤訳とはいえないがニュアンスが違っているように思う。

 『サッカーの敵』に関する補足。例を挙げてみる。

  1. たとえば、「カメルーンを訪れるにあたって、確認したかったことがある。一九九〇年のワールドカップは観光ブームを引き起こしたのではないか?(196頁)
  2. ソ連では、行間の読みかたさえ知っていれば、『プラウダ』から真実を読むことができた。カメルーンでは、真実は新聞にも、ラジオにも、テレビにもなく、ただ口コミで伝えられ、その過程で歪んでいく(206頁)

 Aは指示代名詞が、Bは接続詞があったほうがよいと思われる例だ。僭越ながら書き直してみるとこうなる――

  1. たとえば、「カメルーンを訪れるにあたって、確認したかったことがある。それは、一九九〇年のワールドカップは観光ブームを引き起こしたのではないか、ということだ
  2. ソ連では、行間の読みかたさえ知っていれば、『プラウダ』から真実を読むことができた。だがカメルーンにおける真実は、新聞にもラジオにもテレビにもなく、ただ口コミで伝えられ、その過程で歪んでいく。

 Bのほうは余計なところまでいじってみた。言いたかったのはこういうことだ。

 

それでは良いお年を(^_^)/~~~。