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講釈師見てきたような嘘を言い

2002.3.17

 16日にフジテレビで『南極物語』をやっていた。内容をぜんぜん憶えていないところをみると、どうやら僕は初めて見たらしい。最初のうちは(といっても10時ちょっと前から見たのだが)「可哀相だなぁ」なんて思っていたのだが、いざ、犬たちが昭和基地に取り残されてみたらだんだん話が怪しくなってきた。

 「最初に首輪を抜けたのはケンだった」とか「落ちたのはジョンだった」とか、勝手に作り話をするなよな。一気に醒めてしまった。(慌てて付け加えておくけれども、ケンとかジョンなんて名前の犬はいなかった。ちゃんと引用したってしかたない、所詮ウソなんだから。)

 思い出したのは『アポロ13』。NASAとの通信はすべて記録されているから当然としても、記録されていない会話についても当事者を含む2人以上に確認した、というようなことが文庫本(新潮文庫)のあとがきに書いてあった。一字一句そのままではないにしても、趣旨が異ならないようにウラを取ったというのだ。

 「ドキュメンタリーではなくてドラマを目指したのだ」なんて言われてしまえば返す言葉もないが、虚実の境がハッキリしていないはやっぱり不満である。

いろいろ調べていたら面白いことに気がついた。
岡田英次演じる小沢越冬隊長のモデル西堀栄三郎さんは1903年1月生れ、高倉健演じる潮田暁のモデル菊池徹さんは1921年6月生れ、渡瀬恒彦演じる越智健二郎のモデル北村泰一さんは1931年4月生れ。だから、犬を置き去りにしてしまった1958年3月時点でいうと、順に55歳・36歳・26歳ということになる。
「これまたウソだ」と声を荒げるつもりはなくて、実際にはずいぶん若かったんと妙に感心した。