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三行書評 第42回

2002.3.18

 五つ星が満点。

高島俊男
『本が好き、悪口言うのはもっと好き』
(大和書房ISBN4-479-39033-2)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 著者は、東大の経済学部と文学部を卒業して教師をしていたというが、一本筋の通った知識人だ。
コメント 『漢字と日本人』(文春新書)を読み、面白かったので手を出してみた。裏切られなかった。文章は論理的だし、スジが通っている。もう僕がいろいろ評するのも口幅ったいくらいである。
高島俊男
『お言葉ですが…』
(文藝春秋ISBN4-16-352110-0)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 『週刊文春』連載中の同名エッセイをまとめた第1冊。
コメント こんなにしばしば文章の不備が見つかると、読んでいて疲れるのじゃないかと思ってしまう。『ぼくは偏食人間』(新潮社)を書いた中島義道さんに感じたのと同じ感想だ。僕の経験から言って、そういう不備が多いと書いてある内容がさっぱり頭に入ってこないことがある。「ひと月に五十冊くらい本を読む」らしいが「四十八冊から四十九冊は途中までである」(119頁)というのもうべなるかな。
高島俊男
『お言葉ですが…「それはさておき」の巻
(文藝春秋ISBN4-16-353770-8)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 『週刊文春』連載中の同名エッセイをまとめた2冊目。
コメント United States of Americaがどうして合国なんだろう、どうして合国じゃないんだろう、と不思議に思っていた。これは江戸幕府の役人が訳した。世襲の君主がいないアメリカの特色に沿い、周礼しゅうらいという中国古典の「大封之礼合衆也」から採ったそうだ(意味は「国の境域を定める儀式の際は国人がみな集合する」)。納得はしたのだけれど、僕は、別の理由もあって合州国のままでいく。
高島俊男
お言葉ですが…(5)キライな言葉勢揃い』
(文藝春秋ISBN4-16-357090-X)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 『週刊文春』連載中の同名エッセイをまとめた5冊目。
コメント 3・4冊目は読めなかったが、5冊目までくると僕自身耳の痛い話が出てきている。「電話を入れる」とか「つなげる」とか使っちゃうもんな。さらに、符号“=”について。「『=』をしきりにもちいてある文章には上質のものはないことがよくわかる」と断じられていて耳が痛い。「=」に限らず、僕はよく符号を使うんだよな。自戒しよ(使うけどさ^_^;)。
斎藤美奈子
『文章読本さん江』
(筑摩書房ISBN4-480-81437-X)
お薦め度 ★★★★
あらまし 御三家(谷崎潤一郎・三島由紀夫・中村真一郎)新御三家(丸谷才一・本多勝一・井上ひさし)に限らず、《すっかり解脱して「無の境地」に至》りながら五〇冊を超える文章読本を読破。明治以降の作文教育にまで言及し、文章読本の将来も考えている。
コメント 斎藤さんは文章のプロだ。ただし、名の知れたプロフェッショナルではなくて職人としてのプロレタリアート(ってこの言葉の使い方は本書からの受け売り)。文章創作で悩んでいる方には★×5(技巧的に得られるものは少ないけどね)。