←前回 次回→ ?今月の目次 ジャンル別一覧  ご意見ご感想はこちらから

三行書評 第50回

2002.5.20

 五つ星が満点。

椎名誠
『ハリセンボンの逆襲』
(文藝春秋ISBN4-16-358110-3)
お薦め度 ★★★★★
あらまし 『週刊文春』連載中の「新宿赤マント」シリーズ第13作。
コメント 鉄火マグロ丼・銀火カツオ丼・サンマ丼・ひつまぶし・ふぐ天丼・カキフライ丼・牛丼など、「ワーッ」と言いながら食うドンブリが、僕も好き(「ドンブリ大行進」)。早食いする必要はないけれどもね。
ちょこちょこ現れるレシピ(もどき)が役に立つかも。
風間深志しんじ
『地平線への旅』
(文藝春秋ISBN4-16-343210-8)
お薦め度 ★★
あらまし ソリを引っ張るスノーモービル(「スノモ」と略すのはいかがなものか)2台・同行者4名(映像記録担当佐藤秀明・装備食糧担当関崎・氷上生活技術担当のイヌイット2名)とともに、バイクで北極点に到達した著者の日記。
コメント 何もしない隊員に《イライラするが、そんなことは口に出して言えない》そうだが、隊長としてそういうことでいいのだろうかと思ったり、お世辞にも上手な文章とは言えない―――分り難い文章なので推測しながら読んだりと、あまり集中できなかったなぁ。いや、到達自体は偉業だと思うけども。
志水辰夫
『きのうの空』
(新潮社ISBN4-10-398603-4)
お薦め度 ★★★★
あらまし 『小説新潮』連載の10作をまとめたもの。
コメント 「世代小説」と勝手に名づけさせてもらう。国民学校で敗戦を迎えたくらいの少年が、結婚して親になって子供が結婚して親が老後になってやがて亡くなって……といった時代背景ごとに応じた物語。子供ができ、父親との和解を描いた「高い高い」が白眉。
高橋昌一郎
『科学哲学のすすめ』
(丸善ISBN4-621-04965-8)
お薦め度 ★★
あらまし 《記号や数式をいっさい使用せず、いわゆる専門用語も必要最小限にとどめ、具体的かつ身近な話からはじめて、徐々に科学哲学の主要概念を説明するようにした》連載――物理科学雑誌『パリティ』2000年8月号から2001年8月号まで――をまとめたもの。
コメント 擬似科学の判定基準とか、論理実証主義とか、パラダイム論とか……なんや解らん^_^;。だから、上記あらましも「はじめに」からパクりました。著者は國學院大學文学部教授だから、バリバリの“哲学”である。難しいよね>哲学。
荒俣宏
『夢の痕跡』
(講談社ISBN4-06-206766-8)
お薦め度 ★★★★
あらまし ドイツ博物館スミソニアン協会プリンストン高等研究所マサチューセッツ工科大学などを巡り、「科学の20世紀」を振り返る(リンク先は英語です)。
コメント 科学好きにはたまらない読み物。ただし、系統立ててではんくて、博物館の展示に触発されてテーマを選んでいるので、“勉強”にはならないかも。
知的生活追跡班
『「ハイテク」の大疑問』
(青春出版社ISBN4-413-03262-4)
お薦め度
あらまし 「カーナビのカラクリ」「液晶」「体脂肪計」「形状記憶シャツ」「UV化粧品」「ファクシミリ」「リモコン」「携帯電話」「缶入り熱燗酒」など、身近な謎と疑問を大解剖! というのが、謳い文句。
コメント 玉石混交というか中途半端というか。例えば、《(PHSは)カバーできるエリアが狭いため、自動車などでの移動中はほとんど通話不能になってしまう》と書いてあるが、“エリアが狭いから”ではなくて、“基地局の切り替えができないから”だ。ある程度知識がある人にとっては、かえって悩んでしまうかも。
桐山秀樹
『超職人』
(PHP研究所ISBN4-569-55789-9)
お薦め度 ★★★
あらまし 《東海道新幹線の社中で読まれる月刊誌『ウェッジ』》に連載したハイテク日本を支える職人たちを取材した読み物。
コメント 概観するには役に立つけれども、細かいことになるとどうだろう。長くなるので欄外に書きました。

 例えば、1m四方の石盤を0.35ミクロンの凹凸に収める話を、《東京から弓を引いて五百キロ先にある大阪の通天閣を射抜くほどの「水平」さ》に譬えるのだが、ピンと来ます? 僕にはピンと来ない。僕が譬えるなら、「2.8km四方の土地に、1円玉(厚さ1mm)程度の凸凹しかない」とするが、いかがでしょう。

ピンと来ないだけでなく、間違ってもいる(と思う)。500km(5.00×105m)先にある高さ103m(1.03×102m)の通天閣を見ると、その視角は42.5秒になる。いっぽう1.00m先にある0.35μm(0.35×10-6m)の段差を見た場合の視角は0.07秒だ。2桁違うゾ。凹凸を103mにするならば、その距離は29万km余りになるはず(それとも僕の考え方が間違っているのかな)。参考までに付け足しておくと、月までの距離が約38万kmです。